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著書コラム

パラダイムでたどる科学の歴史
中山茂

写真:パラダイムでたどる科学の歴史

 「パラダイム」という言葉を耳にしたことがありますか。ある知的活動の方向を決めるような基本的業績のことで、その基本的な路線の革命・変更という場合によく使われます。パラダイムに基づいて一定方向に発達進歩する一連の仕事を「通常科学」といいます。
 もっと詳しいことはこの本で説明していますが、その言葉の元をたどれば、クーンが『科学革命の構造』(1969)で使い出した言葉です。私もかつてそれぞれの学問でパラダイムが何で、それがどう変わるかを確かめようとして『パラダイム再考』(1984)を出しましたが、さらに日本学術会議ではあらゆる学問で12年間にわたって議論して「学術の動向とパラダイムの転換」(1997)という報告書を出版しました。これは主に社会科学者のあいだで大きなインパクトを与えましたが、さらに学問だけでなく一般にも路線の変更という時には使われるようになりました。
 パラダイムの一つの効果には、科学の進歩はすべて良いことだ、というかつての啓蒙主義的科学観に水を差したことです。科学は未来永劫一定方向に進化するのではなく、科学のパラダイムは変わり、科学革命になります。ではどんなパラダイムがよいのか、人類にとって一番受け入れやすいパラダイムは何か、という問題が生じます。
 この本ではもっとも基本的なパラダイムを展開させました。科学者集団によってパラダイムが決められ、通常科学の路線が設定され、その上で科学はずいぶんと進歩したものです。ところが、20世紀以来科学が技術と結びついて、社会に大きな影響を与えることになると、色々なパラダイムが立ち現れてきて、その方向は科学者集団だけには任せておけないことになり、「ポスト通常科学」的段階に入ります。そこでは産官学の科学利益集団だけでなく、市民も巻き込まれます。原子力とか自然エネルギーとか。その中で我々に合うものとして何を選択するか、それによって人類文明の将来が決まります。

『パラダイムでたどる科学の歴史』の詳細はこちら

2011年06月27日

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