コラム

著書コラム

英語と一緒に学ぶドイツ語
宍戸里佳

写真:英語と一緒に学ぶドイツ語

いつか徹底的に、ドイツ語と英語を比較してみたいと思っていました。ドイツ語を教えていると、特に初心者クラスで、「どうしてこうなるの?」「英語は違うのに」という無言の抵抗(!)を感じることがあります。するとこちらもそれを受けて、「英語とは違ってドイツ語では・・・」とか、「ここは英語と同じですね」などと説明せざるを得ない雰囲気(?)になります。そんなことを積み重ねていくうちに、小出しにではなく、文法全体を見渡して比較できたらいいなあ、と思うようになっていました。

【複数の外国語を学ぶ楽しさ】

 私が初めて外国語を自発的に学んだのは、高校3年のときです。週2回ある選択科目のなかに、1つだけ外国語の授業があり、それがフランス語でした。ドイツ語は幼児期から、英語は中学から触れていたので、ここで1つ新しい言語を学んでみても悪くないな、と思い、チャレンジしてみることにしました。「発音が美しい」と言われるフランス語が、どの程度美しいのか?という興味もありました。

 本格的に外国語学習のスイッチが入ったのは、大学1年の春休みです。2年生で原書講読の授業が始まるのを前に、ドイツ語の文法を総復習しておこう、と思ったのがきっかけです。それまでは文法用語も知らず、感覚的にドイツ語を読んでいたのですが、そこで初めて全体の体系がわかり、目からウロコだったのを覚えています。

 大学2年になって、ラテン語とイタリア語を始めました。ラテン語は大学の授業にあったのを興味本位で受講し、イタリア語はイタリア旅行で話したいという強いモチベーションから、NHKのラジオ講座を使ってかなり本気で学びました。(イタリア語で勢いに乗り、別の外国語講座にも手を出してみましたが、「習得」までにはいたりませんでした・・・。)

 このように次々と外国語を学習していった背景には、ゼロから学ぶ楽しさを知ったことがあります。真っ白な紙に、習ったばかりの表現を積み重ねていくと、いつの間にか、ある程度のことは話せるようになっているという、小気味よさ。これにすっかりはまってしまったのでした。

【英語がいちばん難しい!?】

 新しい外国語に手を出していく一方で、やはり大学2年生ごろから、英語の勉強にも目覚めました。とりあえずは英検を受けていこうかと、(当時の)2級、準1級と受けていったのが始まりです。しかし1級の壁は厚く、単語は覚えきれないし、リスニングは速くて追いつけないしで、どうしても乗り越えられませんでした。

 新しい外国語はどんどんできるようになって楽しいのに、どうして英語は難しいのだろう? こう考えたときに、2つの理由がある気がします。

 まず1つは、基礎を学ぶのは簡単だ、ということです。どんな言語でも、初めのとっかかりさえできてしまえば、ある程度の範囲まではどんどん学習できます。これに対して英語は、すでに高校の段階でこの「ある程度の範囲」に到達してしまっているので、このあとの積み上げが難しい、というわけです。(ついでに言えばドイツ語も、留学前の最後の詰めで、非常に苦労しました。)

 もう1つは、英語特有の問題です。一説によると、学習言語としては、英語がいちばん難しいのだそうです。英語はさまざまな言語から影響を受けているので、単語数が非常に多い。綴りと発音の不一致も多いし、文法上の例外も多い。つまり、ある程度以上を学ぼうとすると、非常に労力がいる言語なのだそうです。

【英語より先に、第3の言語を!】

 まずは英語ができるようになってから、新しい言語を学びたい。― こう思う人は多いようです。でも、上に挙げた2つの理由から、「英語ができる」状態になるのは非常に難しいのです。そのため、本当に英語ができるようになるまで待つと、いつまでたっても新しい言語を勉強できないことになってしまいます。

 その反面、英語と並行して勉強するという方法は、英語にも大きな効果を及ぼします。まず、英語学習に勢いがつきます。先ほど述べたように、初めての言語というものは、どんどん吸収できるからです。それから、同じヨーロッパ言語を学ぶと、英語だけにとどまらない、大きな言語体系といったようなものがつかめてきます。品詞や時制、分詞表現といった個々の細目が似通っているため、英語を外から見ることができるようになるのです。まさに一挙両得、というわけです。

 話がずいぶん遠くまで来てしまいました。最後に、ドイツ語を知っていて「得をした」経験をお話しましょう。ドイツ語では、「Schwindel」(詐欺)という言葉を日常でよく使います。留学後に受けた英検1級の試験で、「swindl」という選択肢がありました。この単語は見たことがなかったのですが、ドイツ語とあまりによく似ているため、「詐欺」だろうと見当をつけ、みごと正解! 英語では使用頻度が低すぎて覚えきれない単語が、ドイツ語では日常語であるために、英語として覚えなくて済んだ1つの例です。同じことがラテン語にも、イタリア語にも、そのほかの言語にも、言えるはずです。ぜひ第3の言語を習得して、英語の学習にも弾みをつけてください!

『英語と一緒に学ぶドイツ語』の詳細はこちら

2012年11月27日

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