書籍詳細

地底の科学 地面の下はどうなっているのか
地下資源や地震など、関心が高まっている「地面の下」のことをわかりやすく解説。

地底の科学 地面の下はどうなっているのか
著者名
後藤忠徳
ISBN
978-4-86064-370-6
ページ数
200ページ
サイズ
A5判 並製
価格
定価1,836円 (本体1,700円+税8%)
発売日
2013年10月22日発売

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内容紹介

金属やメタンハイドレート、石油、地熱などの資源。地震や火山の噴火を引き起こす原因であるプレート。人口問題や自然災害などと関係の深い地下水。これらのものが眠っている地中や海底は、遠い存在のようで、じつは私たちと無関係ではありません。地下深くの世界には何があるのでしょうか。そんな世界をどのように調べているのでしょうか。本書は物理探査という方法をお供に、みなさんを地中・海底旅行へとご案内します。

著者コメント

(「はじめに」より)

●緊急指令! 地底人を探せ!
 突然ですが、あなたにミッションが与えられました。私たちが暮らすこの地球の中、足元の地面の奥深くに、どうやら地底人が住んでいるらしい、という情報をキャッチしたのです。地底人は、とても素晴らしいエネルギー資源や鉱物資源をたくさん持っていて、どうもそれを分けてくれるようなのです。ですから、地底人を探して、友好的に取引をした
いと思います。

 「本当に? 本当に地底人はいるの!?」。それはわかりません。
 「地底人ってどんなカッコウ? 何を食べて生きているの?」。それもわかりません。
 「えら呼吸? 肺呼吸? そもそも呼吸してるの?」。それもわかりません。
 「どのぐらいの深さにいるの?」。それもわかりません。
 「どんな言葉を話すの? どうやってコミュニケーションをとるの?」。それもわかりません。

 ただ、この情報はある信頼できる筋からもたらされたものです。自社、自国、ひいては人類の発展のために急げ! ということで、地底人探索プロジェクトチームが結成され、あなたにはそのプロジェクトのなかで「地底人を探し出す」という指令が下されました。

 ……はてさて、どうやって地底人を探しましょうか?

 私はよく、大学1年生の学生さんにこんな質問をしています。そうすると、たくさんの学生さんがこう答えます。
 「穴を掘ってみる!」と。
なるほど。そうですよね。その通り、決してそれは間違ってはいません。

 でも、もうちょっと考えを掘り下げてみましょう(穴だけに!)。穴を掘る、ということは、地下の土や岩を直接手に取ることができますし、肉眼で穴の中の様子を見ることができる場合もあって、とってもわかりやすい方法です。ですがその半面、問題もたくさんあるのです。どんな問題でしょうか? ちょっと考えてみましょう。

●穴を掘れないいくつかの理由
1)コストがかかる。
 本格的に掘削するには、それなりの重機や設備、そしてたくさんの人が必要になります。さらに、とても時間がかかります。つまり、経済的コスト、人的コスト、時間的コストがかかってしまうのです。
 たとえば、地表から垂直に穴を掘ると、穴ひとつの掘削費用は深さ10m 程度でおおむね10 ~ 20 万円必要です。単純計算しても、深さ100 mでおよそ10 倍、1000 mでは100 倍、数千万円はかかります! 
この費用は掘削する場所によって大きく変動します。何しろ地下という「未知の世界」に穴をあけていくわけですから、途中で思いがけないトラブルや、その対策のための余分な費用が発生することもありえます。現実には深い穴1 つに何億円も必要になるでしょう。しかも、これらの穴の直径は、数cm から大きくても20cm ほどです。人間(や地底人)が入れるような大きな穴を掘ることも可能ですが、お金や時間はもっとかかるし、いろいろな危険がたくさん待ち構えています。
 億万長者のクライアントさんだったら「いいよ。掘削続行!」と言ってくれるかもしれません。ですが、せっかく掘った穴の先に地底人がいる保証はどこにもないのです。途中で運よく、貴重な石や砂、珍しい鉱物などは得られるかもしれませんが、湯水のようにコストをかけるわけですから、もうちょっと効率よくいきたいものです。
 そんなわけで、「掘る」ためには、たくさんのコストがかかってしまうのです。

2)掘るにも限度がある。
 次に、深度の限界。世界最深掘削記録をご存じですか?
 じつに1 万2262m。これは、ロシアが「ソビエト連邦」と呼ばれていた時代に達成した最深記録です。当時のソビエトは、宇宙進出や深海潜水など、何かにつけてアメリカと競っていました。この記録は、フィンランドに近いコラ半島という場所で、地球の地殻深部を調べる科学的掘削計画(コラ半島超深度掘削坑)で達成された“偉業”でした。ソビ
エトは1970 年から掘削を開始し、1989 年に世界最深記録を更新しました。そのまま行けば1993 年には目標の深さ1 万5000m に達するはずでしたが、残念ながら、地下の温度が180℃となり、予想以上に熱すぎたため1992 年に計画断念(その前の1991 年にソビエト連邦は崩壊してしまいました)。じつに20 年以上の掘削作業だったのです。
 いやあ、人類ってすごいですね、こんなに掘ることができるなんて。富士山を縦に3 個積んだ高さに匹敵する深さですよ!……と感無量ではありますが、今一度考えてみてください。地球の半径は約6400km。地球をサッカーボール(直径22cm)にたとえると、この穴の深さは0.2mm 程度=ボール表面の皮の厚さの、さらに10 分の1 以下です。人類から見たらたいへんな深度ですが、地球から見たらまだまだ浅いのです。
 ちなみに非公式のようですが、世界最深掘削記録は2011 年に更新されています。場所はロシアのサハリン。天然ガス採掘用の井戸で、深さは1 万2345m(覚えやすい!)。コラ半島での掘削計画終了から約20年が経って、100m 足らずの記録更新です。「サッカーボールの皮一枚」にさえ到底満たない深さであることに変わりはありません。
 もちろん、地球上のどの場所、どこでもこういった記録に挑戦できるわけではありません。特に火山地帯や断層などは、硬い岩盤ともろい岩盤が入り混じっているので、何km もの深さの穴を掘るにはたいへん苦労します。硬い岩盤を掘るほうがたいへんじゃないの? と思いがちですが、じつは、もろい地盤のほうが穴の内部が崩れやすく、深くまで掘るのは難しくなります。
 そんなわけで、掘削には非常に制限があるのです。

3)掘っちゃいけない。
 地下を掘削するということは、自然のものや、自然に埋もれたものに、人工的に穴をあけるということです。そのため、地中の穴が何らかのよくない影響を及ぼさないかどうか、考えておく必要があります。
 たとえば地下水の分布を調べるために、狭い地域に何十本と井戸を掘ると、地下水の流れ自体が変わってしまうかもしれません。あるいは遺跡調査の場合、闇雲に掘っていては、大切な埋蔵物を粉々にしてしまう可能性が十分あります。
これらのように、技術的には簡単に穴を「掘ることができる」としても、「掘ってはいけない」場合、また「掘る場所を最小限に抑える必要がある」場合が多々あります。掘削のために周囲の環境に負荷をかけてしまっては元も子もありませんものね。
そんなわけで、そう簡単に掘削に着手するわけにはいきません。かといって、地下探査をやめるわけにもいきません。さて、どうすればいいでしょう?

●病院で地下探査?
地底人をどうやって探せばよいのか? あなたは、昼夜を問わずいろいろ調べ、考え、ぐるぐる歩きまわったため、疲労でダウンしてしまいました。念のため、病院に行ってみましょう。病院であなたはお医者さんに「ちょっとだるくて頭痛がします。胃も少しシクシク痛みます」と訴えます。
そこでお医者さんはどうするでしょうか?「じゃあ手術しよう!」と言って、いきなり頭やお腹を切り開いて原因を探そうとするでしょうか? しませんよね。まずは体温や血圧を測ったり、聴診器で心臓や肺の音を聞いたり、心電図を撮ったり、レントゲン撮影をしたりするでしょう。体を切り開かずに間接的に「見る」ことで、体の内部の様子を「診る」わけです。

 これだ! これですよ!
お医者さんは、温度(体温)、圧力(血圧)、音(聴診)、電気(心電図)、X 線(レントゲン撮影)といった、さまざまな「物理現象」を「センサー」で測定し、間接的に体内の様子を探っています。この技術を応用すれば、地球の中身を間接的に「見る」ことができるのです。
 音や電気・電波などを使って、地下を掘らずに探査するこのような技術は「物理探査」と呼ばれています。物理探査では、人工的に発生させた物理現象や自然の物理現象を測定して、物理の法則などを用いて測定データを解析することによって、地下の様子をイメージ化します。
 突然難しくなりましたか? いえいえ、病院で人の体を調べる代わりに、野外で地球を調べているだけなのです。物理探査の技術者はさながら、地球のお医者さんです。でもやっぱり不思議、いったいどうやって地下を調べているのでしょう? そして地下の様子はどうなっているのでしょう?
  この本では「穴を掘らずに地下を見る」という技術をお供にして、地下や海底の世界をみなさんに紹介したいと思います。いろいろな物理探査のうち、特に電気や電波を使ったお話を軸に地下を旅していくことにします。まあ、難しいことは後回しです。生活に密着した地下世界から、まだ人間がたどり着いていない深さまで、さまざまな地下旅行・海底旅行へご案内いたしましょう。

著者プロフィール

後藤忠徳(ごとう ただのり)

京都大学大学院工学研究科准教授。
博士(理学)。東京大学、愛知教育大学、海洋研究開発機構などを経て現職。
専門は物理探査学、地球電磁気学。地下探査技術を独自に開発し、海底活断層・海底資源の調査や、地下水調査を行っている。著書に『海の授業』(幻冬舎)がある。
趣味は、バイクとお酒、美術鑑賞。
ブログ「海の研究者」( http://goto33.blog.so-net.ne.jp/ )では、日々の研究の様子や、地球や海の話題を更新中。

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