数多くの小説や漫画、ドラマで有名な「項羽と劉邦」。これは中国古代史における楚漢戦争を扱ったものですが、その多くは創作が入り混じったエンターテイメント作品です。一方、本書は、司馬遷『史記』に基づいた“正史”となります。臨場感あふれる解説で、秦の中央集権樹立から楚漢戦争、そして項羽の死までを描きます。
中国史上初の統一政権を樹立した秦はなぜ滅亡したのか。項羽と劉邦はどのように勢力を伸ばし、争うようになったのか。その実態に迫ります。
小説にあらずとも、小説やドラマを楽しむように中国古代史の重要テーマが学べる一冊です。
書籍詳細
世界史劇場 項羽と劉邦
司馬遷『史記』に基づき、項羽と劉邦の時代をドラマティックに描く!

- 著者名
- 神野正史
- ISBN
- 978-4-86064-691-2
- ページ数
- 440ページ
- サイズ
- A5判 並製
- 価格
- 定価2,310円 (本体2,100円+税10%)
- 発売日
- 2022年05月18日発売
内容紹介
著者コメント
(「はじめに」より)
中国は、実在すら疑わしい夏王朝まで遡って、俗に「中国四千年の歴史」などと言いますが、実証学的歴史から見れば、民族・領土・制度・思想・理念・思想・文化など、現代中国の原型が生まれたのは、今から2 0 0 0 年ほど前の秦・漢初のころです。
つまり、現代中国の原型は、このころの「秦の統一過程から楚漢戦争」にかけて構築されてきたものです。
“ 赤子の魂百まで” などと言われますが、したがって、現代中国の本質を理解しようと思うなら、この時代の歴史を学ぶことは必須となります。
しかしながら、「秦の統一過程」については、すでに本シリーズ『春秋戦国と始皇帝の誕生』で学んできましたから、本巻では「楚漢戦争」について学んでいくことになります。
新しい時代が生まれるときというのは、つねに“ 産みの苦しみ” を伴うもので、このときにはそれが「項羽と劉邦」という2 人の英雄が覇を競う時代となって現れ、そこにさまざまなドラマが生まれ、日本でも『三國志』に次いで人気のある時代となりました。
しかし、時代を越えて多くの人々に愛された歴史というのは、より庶民に親しみやすくするため、小難しいところは排除され、説明の足りない部分やわかっていない部分に創作を加えて辻褄を合わせ、あるいは話をおもしろくするために実在しない架空の人物を登場させたりして、「娯楽小説」に生まれ変わって長く読み継がれるようになるものです。
たとえば、「三国時代」などはその典型で、史書としての『( 正史)三國志』が小説に生まれ変わって、「七分の実事、三分の虚構」と表される『三國志演義』( 演義とは「小説」の意)となっていきました。
同じように、この「項羽と劉邦( 正史『史記』の秦末漢初の部分)」からも虚構を織り交ぜた『西漢通俗演義』という小説が生まれ、一般にドラマ・映画・漫画などの二次創作物で親しまれている『項羽と劉邦』はすべてこれを底本としたもので、『史記』ではありません。
こうして、『三國志』にせよ、「項羽と劉邦」にせよ、一般的には正史( 史書)より演義( 小説)の方が知られているため、よく「史実と創作の混同」が見受けられます。
もちろん、本『世界史劇場シリーズ』はあくまで「歴史」の入門解説書ですから、本書で扱われているのはあくまでも「正史」です。
そのため、「あれ? ここのところ、私が知っている物語・設定と違うな?」と思われたなら、おそらくそれは、「小説」の創作の部分です。
本書で扱われている「項羽と劉邦」は創作ではない、れっきとした正史に記録された“ 歴史” ですから、「人生教訓の宝庫」です。
血湧き肉躍る“ 人間ドラマ” を楽しみながら、同時に、彼らの生き様からさまざまな教訓を学び取って人生の勉強にもなり、教養も高まる。
これぞ、歴史の醍醐味です。
では、世界史劇場「項羽と劉邦」編、開幕です!
著者プロフィール
神野 正史(じんの まさふみ)
河合塾世界史講師。世界史ドットコム主宰。学びエイド鉄人講師。ネットゼミ世界史編集顧問。ブロードバンド予備校世界史講師。歴史エヴァンジェリスト。1965 年、名古屋生まれ。出産時、超難産だったため、分娩麻痺を発症、生まれつき右腕が動かない。剛柔流空手初段、日本拳法弐段。立命館大学文学部史学科卒。既存のどんな学習法よりも「たのしくて」「最小の努力で」「絶大な効果」のある学習法の開発を永年にわたって研究。そして開発された『神野式世界史教授法』は、毎年、受講生から「歴史が“見える” という感覚が開眼する!」と、絶賛と感動を巻き起こす。「歴史エヴァンジェリスト」として、TV 出演、講演、雑誌取材、ゲーム監修など、多彩にこなす。「世界史劇場」シリーズ( ベレ出版)をはじめとして、『最強の成功哲学書 世界史』(ダイヤモンド社)、『粛清で読み解く世界史』(辰巳出版)、『暗記がいらない世界史の教科書』(PHP 研究所)など、著書多数。