コラム

ぶかぶかのベレー帽

大人の社会科見学にて

巨大な機械が唸りを上げている。轟音の主は、鉄の階段を昇って案内された建屋の2階にどしりと鎮座するN6マシンだ。全長300メートルにも及ぶそのマシンの端っこははるか先に霞んで見える。これがあの時の、復興のきっかけにもなった「希望の星」なのだ。N6マシンとは総生産量年間35万トン、日本製紙石巻工場の誇る世界最大級の抄紙機である。

今年の6月に、ベレ出版全員で日本製紙石巻工場の見学の機会をいただきました。まずは座学で紙の原料とそれによる仕上がりの違いなどを学びました。針葉樹から作られるNBKP(針葉樹化学パルプ)、広葉樹から作られるLBKP(広葉樹化学パルプ)、丸太をすりつぶして作られるGP(グラウンドウッドパルプ)、古紙から作られるDIP(古紙パルプ)はそれぞれ繊維の柔らかさが違います。実際にそれぞれの原料で作られた紙を触ったり破ったりしながらその違いを体感しました。原料による色の違いもあるのですが、表面の仕上げにも、使用する薬品など製紙会社によって門外不出のレシピのようなものがあるということでした。そしてガイド用のイヤホンとヘルメットを装着し、いざN6マシンを見学に…。

2011年3月11日、海に面した石巻工場は壊滅的な打撃を受けました。そこから復興していく様は、佐々涼子著『紙つなげ!彼らが本の紙を造っている』(早川書房)に詳しく語られています。工場構内には周辺の民家が流入し、コンテナや軽トラック、重量約1トンの古紙もおもちゃのように転がり、建屋にはトラックが何台も突き刺さっている。そんな状態からたったの半年でまず一台の抄紙機(8号機)を動かしたこの工場に、出版社は救われました。そして、石巻工場から出荷できなくなった分を日本製紙の他の工場や、他の製紙メーカーが協力してバックアップしてくれたことに、出版社は救われました。

いまは何事もなかったように動いているN6マシンを見上げながら感じたことを忘れまいと思いました。

バンドウ

2017年08月29日

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