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本がもし売れたとしたら、それは皆々様のおかげです

ウチの社長は声が大きい。そして若く、さらに、矢鱈と優秀である(自社の社長をこんな風に褒めるのも変ですが)。議論を戦わせて勝てる者は社内にはいない。そんな社長を相手に編集部員は各々、企画を通し、タイトルを通し、カバーデザインを通さなければならない。全ての最終的な決定権は社長にある。小さな会社なのだからあたりまえのことである。ひとたび社長と意見が食い違うと自分の意見を通すのは至難の業である。議論をしていると、だんだんあちらの意見が正しいように思えてくる。ここに来る前までは、信じて疑わなかった自分の意見が揺らいでくるのである。そうなるともはや太刀打ちどころの話ではない。声帯の太さが目に浮かぶようなバリトンボイスで完全にやり込められてしまうのである。仮にそのように出来上がった本が売れなかったとする。それは最終的にそのような形で決裁をした社長の責任とも言える。しかし、だからといって、各々の編集者はそれを社長のせいにできるであろうか。自分はあの時にああ言っていたのに社長がこう言ったから、本がこう出来上がって、だから売れないのは社長のせいだと言えるだろうか。いや、言えない。その本が結果的にそのように出来上がって、そのような結果になったとしても、それは一から十まで編集者の責任である。少なくとも編集者本人はそう感じるべきである。社長のせいでも著者のせいでもましてや営業部のせいでもない。「出版は水物である」ともいわれる。理屈だけでなんとかなるものではない。それこそ出版の怖さであり、面白さなのだと思う。本を出す前に、企画やタイトルやカバーデザインの正解を知る者はいない。だからこそ、担当編集者は正解を目指して誰よりも考え、時には声の大きな社長を相手にも引かずに戦わなければならないのである。逆にもし、仮に本が売れたとしたのなら、それはすべて著者をはじめとする皆々様のおかげです。

バンドウ

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