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  • 編集部コラム

ほんとの空を仰ぎに 安達太良山にて

智恵子は東京に空が無いといふ、

ほんとの空が見たいといふ。

(中略)

阿多多羅山(あたたらやま)の山の上に

毎日出てゐる青い空が

智恵子のほんとの空だといふ。

(高村光太郎の詩集『智恵子抄』に収録された「あどけない話」より)

到着した奥岳登山口の上空は曇っていたものの、遠くには雲海を望むことができました。駐車場の近くには「あだたらロープウェイ」の山麓駅がありますが、これを横目にゆっくりと歩き始めます。在宅勤務の運動不足による不安もある中、いきなり心拍を上げないように気を付けながらゆっくりと一歩ずつ。

年に一度の友人たちとの登山ですが、今年はメンバー全員が特別な思いを抱えて登ることとなりました。目指す頂は福島県の誇る百名山の一つ、安達(あだ)太良山(たらやま)。ここに決めた理由は今年の6月に亡くなったメンバーの一人が好きな山だったからです。私と同い年の彼が高校の山岳部に入部して初めて登った山が安達太良山でした。「いい山だよ。」彼の短い言葉はいつも信頼のおけるものでした。

一緒に登るのが当たり前だった彼のいない一行は、一歩一歩踏みしめるように登り続け、様々な美しい景色と心洗われるような山の静けさを愛でながら、無事に山頂に立つことができました。ここで見上げた空が涙でにじんだ、なんて言いません。「ほんとの空、仰いできたよ。ほんとにいい山だったよ。また一緒に登ろうな!」

バンドウ

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