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  • 編集部コラム

「学力は生きる力」

2013年5月の晴れた日、群馬県の百名山、赤城山(あかぎやま)の南に位置する施設に出向いたことがあります。群馬といえば「かかあ天下と空っ風」という言葉が知られているのですが、この空っ風とは冬場に赤城山から吹き下ろす「赤城おろし」と呼ばれる冷たく乾いた風のことです。この日はその冷たい風とは無縁の穏やかな風景が広がっていました。

向かった施設というのは赤城少年院のことです。この少年院で当時、数学教育のサポートをされていた『語りかける中学数学』の著者、髙橋一雄先生と、一緒に活動されている数学者の瀬山士郎先生のお二人からお声がけいただき、授業の様子を見学させていただくことになったのでした。施設に入り、教室へ向かう途中、緊張しなかったといえば噓になります。しかしすれ違う少年たちからは元気な挨拶が飛んできて、少しずつその緊張も和らいでいきました。

いざ目の前で展開された数学の授業の光景は、今でもその空気感も含めて私の記憶に焼き付いています。何よりも、授業に臨む少年たちが、学ぶことの喜びに満ち満ちているように見えたのです。様々な理由でおそらく「学ぶ」ことに向き合うことのできなかった少年たちが、先生方の指導により新しい知識を習得していく姿を、私は純粋に眩(まぶ)しく感じたのでした。

髙橋先生は「学力は生きる力」という信念のもとに少年たちと向き合われています。そのことを実感するとともに、「学力」を身につけていくプロセスもまた、違う形で「生きる力」になっているのだと感じた瞬間でした。

この3月に、髙橋先生、瀬山先生と、当時の赤城少年院院長の村尾博司氏の共著、『僕に方程式を教えてください 少年院の数学授業』(集英社新書)が刊行されました。この原稿を書いている時点ではまだ発売されていませんので刊行を待ちたいと思います。

バンドウ

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