選挙報道で、開票が進んでいないうちから当選確実が出るのはなぜでしょうか。これは統計学の“推定”という手法を用いた結果です。また、農業分野での品種改良や肥料の開発、医療分野での治療法の改良や新薬開発という、対照実験から有効な条件を追究していく現場では“検定”と呼ばれる手法が使われています。いずれも一部のデータから、全体のデータの成り立ちを予想する統計学です。本書では、この“統計学の真髄”ともいえる部分を、数学に自信のない人でも算数だけで確実に理解できるよう丁寧に解説していきます。
書籍詳細
算数だけで統計学!
推定、検定の基礎を算数の知識だけでしっかり学ぶ

- 著者名
- 石井俊全
- ISBN
- 978-4-86064-599-1
- サイズ
- A5判 並製
- 価格
- 定価1,870円 (本体1,700円+税10%)
- 発売日
- 2019年11月13日発売
内容紹介
著者コメント
(「はじめに」より)
この本は、算数の言葉で“統計学の真髄”を解説する本です。読むのに必要な学力は、小学校卒業レベルを想定しています。
中学校で習う数学の知識を前提としていません。中学で数学が嫌いになって、数学とは縁遠い生活を送ってきた人でも本書を読むことができます。
「負の数って未だによく分かりません。
-5℃ってどういう意味ですか。」
「文字式を見ただけでじん麻疹が出るんです。
方程式なんてとても解けません。」
「ヘイ、ホウ、コン(平方根)ってなんですか?
ゴルフのスウィングのときのおまじないかな。」
そんなご意見・ご感想をお持ちの方もご安心ください。この本では、負の数の入った計算も出てきませんし、文字式も扱いませんし、平方根という単語も用いません。ひたすら地を這は うがごとく、算数の言葉で統計学の真髄を解説していきます。
あっ、例外が1つだけありました。√(ルート)です。申し訳ないですが、これだけは使わせてください。でも、決して√(ルート)を既知として扱うことはしません。義務教育を修了した方でも√(ルート)を忘れている方も多いでしょう。日常生活の中では、パソコンやスマホで電車のルート検索はしても、2の√(ルート)計算はしないからです。ですから、この本ではルートという記号の意味や計算の仕方を知らないものとして一から丁寧に導入していきます。その際でも、平方根には触れませんし、中学3年生の期末試験に出るような√(ルート)についての公式も述べません。統計学で必要となるところだけを抜粋して解説し、余計な解説は省きます。
この本は最小限の労力で統計学の真髄が分かる本なのです。
ここまで、“統計学の真髄”という言葉を何度か使ってきました。ところで、統計学の真髄とは何でしょうか。
私が思うに、統計学の真髄とは、一部のデータから、全体のデータの成り立ちを予想するテクニックのことです。
みなさんは、小学校で棒グラフ、円グラフ、帯グラフなど、データを図形で表す手法を学んだことでしょう。また、義務教育を終えた方は、すでにヒストグラムの書き方を知っているかもしれません。これらは統計学の中でも記述統計と呼ばれる分野で、データを分かりやすくまとめるためのテクニックの一つです。
統計学には、記述統計に対して、推測統計と呼ばれる分野があります。
例えば、みなさんは選挙報道で開票が進んでいないうちから当選確実の判断が下されることをご存知でしょう。また、テレビ視聴率の調査では、たった数百世帯のテレビにカウンターを設置し視聴率を調査することで、関東地区全体の視聴率を割り出しています。これらは推測統計のうちの"推定"と呼ばれる手法の応用です。
また、農業分野では品種改良・肥料の開発、医薬分野では治療法の改良・新薬開発といった、対照実験をしてより有効な条件を追究していくような現場があります。ここでは、確率の考え方を用いて有効性を上げるための最適な条件を絞り込んでいきます。これは推測統計の中でも"検定"と呼ばれる手法です。
推定も検定も、一部のデータからデータ全体の成り立ちを予測する推測統計の例です。この推測統計こそが、統計学の真髄であり、世の中で一番役に立っているところです。特に検定は、科学の発展と技術の進歩を根幹で支えている手法であると私は考えます。
この統計学の真髄を理解するには、本来は中学・高校で習う"確率"の基礎が固まっていなくてはいけません。ですから、現在の文部科学省(文科省)のカリキュラムでは、推定(この本でも解説する推測統計の手法)を学ぶ前に、確率の単元があります。
しかし、確率の単元を完全に理解してから、統計学に進むというのでは、統計学の理解を目標にしている人にとっては、効率が悪く負担が大きすぎます。説明の工夫次第では、高校で習う確率のはじめの方だけを確認するだけで、統計学の説明に入っていくことが可能です。
そこで、この本では中学校の数学や高校で学ぶ確率の単元の面倒なところをすっ飛ばして、統計学の真髄に算数の言葉で迫ろうと考えています。
最低限の装備でみなさんを統計学の頂までお導きしようというのがこの本の企図です。
著者プロフィール
石井俊全(いしい としあき)
1965年、東京生まれ。東京大学建築学科卒、東京工業大学数学科修士課程卒。
大人のための数学教室「和」講師。確率・統計、線形代数から、金融工学、動学マクロ経済に至るまでの幅広い分野で、難しいことを分かりやすく講義している。
著書
『中学入試 計算名人免許皆伝』(東京出版)
『1冊でマスター 大学の微分積分』
『1冊でマスター 大学の線形代数』
『1冊でマスター 大学の統計学』(いずれも技術評論社)
『まずはこの一冊から意味がわかる線形代数』
『まずはこの一冊から意味がわかる統計学』
『まずはこの一冊から意味がわかる多変量解析』
『ガロア理論の頂を踏む』
『一般相対性理論を一歩一歩数式で理解する』(いずれもベレ出版)
他
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