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  • 著者のコラム

Mr. Evineの「英文法 違いが分かるかな?」クイズ #1

第1回:「過去形」と「現在完了形」使い分け

著者 恵比須大輔(Evine)

Hi、皆さん、2024年7月の連載を担当させていただくこととなりましたEvineこと恵比須です。時制や助動詞など、似ている英文法や表現のニュアンスの違いで、英語学習者、特に初中級レベルの方が悩みがちなものをクイズ形式で解説したいと思います

僕は書籍執筆の傍ら、「Evineの英語塾」という教室で中高生以外にも一般の社会人を教えていますが、授業で実際にいただいた質問を中心に全4回、皆さんとシェアさせていただきます。


それでは、早速クイズにチャレンジしてみましょう。

Q.1「この映画は何度も見ましたよ」という経験を英語で話すと、どちらが自然?

(A) I watched this movie many times.
(B) I’ve watched this movie many times.

過去形が良いのか現在完了形が良いのか、悩むところですね。

Q.2 「朝ごはんを食べたところだ」という完了を英語で話すと、どちらが自然?

(A) I just had breakfast.
(B) I’ve just had breakfast.

Q.3「これから行う可能性」が含まれるのはどちら?

(A) I didn’t read that.
(B) I haven’t read that.

過去形と現在完了形をそれぞれ否定にした英文ですね。

では、簡単にポイントを解説していきます。


Q.1 Answer

「見ました」ですから、英文(A)の過去形だと判断する生徒さんが意外と多いです。実はこれも文法的にはOKですが、一般的に経験は英文(B)の現在完了形を用いたものが自然です。

現在完了形と過去形の違いをあまり理解していないまま使っている生徒さんは多いです。正直、文法的にはどっちでも良いということがありますが、今回は、過去形と現在完了形の違いをはっきりさせましょう。

● 過去形:過去の話(過去の習慣、過去に完了した出来事、過去の事実)
● 現在完了形:現在の話(現在までに経験したこと、現時点で完了していること、現在まで続いている状態)

過去形は過去の話で、現在と切り離したニュアンスがあります。一方、現在完了形はその名の通り、現在の話であり、現在の気持ちを表すニュアンスがあります。

では、英文(A)を用いた場合のニュアンスを改めて確認していきましょう。
この過去形watchedは、「映画を見た」という行為が過去のある時点や時期に何度も行われたことを示し、現在との関係が薄い印象です。例えば、次のように、過去のある特定の期間(太字部分)について話している場合であればとても自然です。
When I was a kid, I watched this movie many times.(子供の頃、この映画は何度も見ました)

一方、英文(B)の現在完了形have watchedになると、映画を何度も見たという経験が現在にも意識として繋がっていることを示しています。つまり、過去のある時点から現在までの間に何度も見たという経験を表現し、太字部分のような心境も示唆されます。
I've watched this movie many times and I still enjoy it.

結論を言えば、一般的に、現在までの経験を述べる場合は、その経験というのは現在の意識にも繋がっている、つまり、現在に影響を与えている感覚があるため、英文(B) I've watched this movie many times. が自然になります。
過去の特定の期間内に起こった事実について話す場合は、英文(A) I watched this movie many times. が一般的です。

では、もう一例で比較してみましょう。どちらも「彼女は財布を失くしました」という意味ですが、ニュアンスのポイントは異なります。

過去形
She lost her purse.
彼女は過去のある時点で財布を失くした、失くしていたという事実を表現し、今どうなっているのかはこの英文ではわかりません。
現在完了形
She's lost her purse.
彼女は財布を失くしてしまい、今もその状態が続いていることを示します。現在に影響を与えている過去の出来事を強調します。

She's lost her purse and she can't find it. (彼女は財布を失くしてしまい、見つけられません)と太字部分のニュアンスが含まれます。

【現在完了形からイメージできること】
現在完了形の文法的な形は「have+過去分詞」ですが、この「have」(厳密には助動詞)は、過去分詞で示される「過去に行われた動作(完了したこと)」を、現在もまだhaveしている(所有している=現在もまだ何らかの影響が続いている)ことを表す形だとイメージしておいても構いません。

Q.2 Answer

これは意地悪な問題でした。正解はどちらも正解。justを用いた英文では、過去形も現在完了形もニュアンスにそれほど差異はありません。副詞justが「ちょうど(〜した)」という完了感を明確にする良い仕事をしてくれるからですね。
*副詞justは「つい、さっき」という意味で、ここでは「時間的な近さを強調」します。

あとは話し方の好みで、特にイギリス人は英文(B)の現在完了形を好みますし、本当にまさに今食べ終わったことを強調したければ英文(B)の方がしっくりくるでしょう。


Q.3 Answer


正解は、英文(B)の現在完了形の否定文です。

英文(A) I didn’t read that.(私はそれを読みませんでした)

→ 過去の特定の時点でその本や文章を読まなかったことを意味しますが、あくまでも終わった過去の出来事、事実を伝えます
英文(B) I haven’t read that.([まだ]私はそれを読んでいません)

→ 現在完了形の否定文の基本は「まだ〜していない」というニュアンスで、現在までの時点でそれを読んでいないことを意味します。同時に、過去から現在までの期間にまだ読んでいないだけで、これからまだ読む可能性が残っていることを示唆します

「I didn’t read that」は過去の特定の時点で読まなかったという事実を伝えることを強調しているのに対し、「I haven’t read that」は現在までの間に読んでいないという状態を表しています。

1文だけを見れば、文法的にどちらも正解ですが、文脈や伝えたい内容で考えるとどちらかが不自然になることが英文法の世界ではよくあります。一方で、Q.2のように、あまり神経質にならなくてもよい表現もありますので、いろいろな英文に触れることで皆さん自身の好みのスタイルをぜひ発見していきましょう


今回、解説したポイントは、ベレ出版から出版した『Mr.Evineの英語塾 コア英文法』をもとにしています。例文や演習解説の中で、日本人が混同しやすい英語表現や英文法の区別は特に重視して丁寧に解説していますので、ご興味のある方はぜひ書籍もご覧いただければ幸いです。

Thanks for reading!
See you in the next column.

(次回以降の記事はこちら)
第2回:様々な「助動詞」使い分け
第3回:「仮定法」、使いこなせてる?
第4回:日本人を悩ませる「限定詞」

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記事を書いた人:Evine(エビン)
本名、恵比須大輔。神戸在住。株式会社evinet biz代表取締役。Teaching Director
神戸と大阪で社会人向けの「やりなおし英語JUKU」と学生向けの「Evineの英語塾」を主宰。10代~80代まで幅広い世代の方を対象に、コア英文法を軸に、実際に使える英語・英会話指導に従事している。観光専門学校での「英文法&英会話クラス」や「TOEIC」クラス、教員向けセミナーなど多方面で活動実績がある。著書に、『Mr.Evineの中学英文法を修了するドリル』『Mr.Evineの中学英文法を修了するドリル2』、『Mr.Evineの中学英文法+αで「話せる」ドリル』、『完全攻略!英検準2級』『動画でわかる! Mr. Evineの中学英文法を修了するドリル』(アルク)、『7時間で中学英語をもう一度やり直す本』(あさ出版)など多数。その他、学校専売品『英文法総合問題集 ES(エス)【はじめて編】/【高校入門編】/【高校標準編】/【高校発展編】』(アルク)など著書多数。趣味は旅行と映画鑑賞。

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