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仕事に活かせる語学力とは[2]

著者 平見尚隆(香川大学 創造工学部教授)

第2回 使わないと身につかない言葉

今月、4回にわたり語学学習に関してコラムを連載させていただきます平見と申します。自動車メーカーに勤めていた私はイギリス、アメリカ、ドイツそしてメキシコと合計13年間ほど海外で暮らした経験があります。現在は香川大学においてエンジニアリングデザイン領域で教鞭をとっています。第2回は、「使わないと身につかない言葉」についてお話しします。

「ヨーロッパでは4か国以上の言葉を話せる人がいると聞く。英語、イタリア語、フランス語、スペイン語……どんな頭の構造しているのだろうか」

という話を耳にしたことはないでしょうか。英語という一つの言語を習得するだけでもひと苦労の日本人にとっては、不思議でたまりません。そもそもの頭の構造が違うのでしょうか。そんなことはありませんよね。言語の類似性などの影響もあるでしょうが、私はズバリ「モチベーションと環境が違うから」だと思っています。

上達しない原因

私の経験を少しお話しします。大学で機械工学を専攻していた私は当時工学系学生の第2外国語(教養教育)として一般的であったドイツ語を2年間ほど学びました。もともと語学に興味があったこともあり、勉強するうちにどんどんドイツ語を好きになっていきました。社会人になっても、将来ドイツで働くことを夢見ながら、ドイツ語会話の学校に通いはじめました。

一年後、イギリスに赴任となりましたが、そこでも、夜間に行われていた社会人のためのドイツ語教育プログラムを2年間受講しました。その後、勤務先の異動で念願のドイツ駐在の機会に恵まれ、ケルン市に約4年間駐在しました。単純計算で、合計9年間程ドイツ語に接してきたわけです。

ここまでお読みになると、さぞかし流暢なドイツ語を話せるようになったのではないかと思われると思います。たしかに駐在当時はタクシーの運転手さんと話せるレベルにはなりましたが(これは外国で現地の言葉を学ぶ一つの方法です)、それ以上は上達しませんでした。勤務先は米国系の自動車会社だったため社内の会話はすべて英語ですし、隣人や子供の学校の先生もみんな英語を上手に話すため、こちらがドイツ語で話しても英語で返してくるといった次第でした。即ち、ドイツ語で会話する機会がほとんどなかったのです。

ドイツ、ケルン
ドイツ、ケルン

英語が通じない

次に、メキシコで業務を行うようになった時のことです。場所は、グアナファトというメキシコシティーから北へ車で4-5時間ほど行った州です。業務上、現地政府の役人などと会議をすることが多かったのですが、その場ではほとんどの人が英語を話しましたので問題はありませんでした。というよりも、英語を話せる人が選ばれて出席していたのだと思います。

ところが、あるマーケットの雑貨店で「ポストカードを3枚欲しい」と、カードを指さし“Three cards please.”と店員に話しても、キョトン。そこで、“One, two, three,…”と英語で指折り数えましたが、理解してもらえませんでした。「こんなことってあるのか」と不思議に思いました。

それから会議に出てくる人以外は英語が話せないということに気付きはじめました。例えば、メキシコ人の英語レベルは、2020年のEF 英語能力指数(https://www.ef.com/wwen/epi/)において世界で82位(440点)日本が55位(487点)であることを考えると、そのレベルがわかると思います。なお、1位はオランダで752点、ドイツは8位(616点)です。

メキシコ、グアナファトの市場
メキシコ、グアナファトの市場

積極的に「使う機会をつくる」

そんなメキシコに駐在することがほぼ決まっていた私は、一心発起しスペイン語を学ぶことにしました。50歳近くになってのことです。文法書を愛読し、NHKの『まいにちスペイン語』を繰り返し聞くなど受験生に戻ったかのように勉強しました。

モチベーションとしてはドイツ語学習とあまり変わらなかったのですが、違っていたのは赴任後の業務や生活を取り巻く「環境」でした。上述のように、日常生活ではスペイン語しか通用しなかったのです。ヨーロッパのマルチリンガルの人たちも、EUの中でこのような状況に置かれているのではないかと思います。おかげで、前職の広島大学では教養教育のスペイン語を担当させていただけましたし、ベレ出版さんにはスペイン語の参考書を出版させていただく機会もいただきました。言語を身につけるためには、どんな状況に置かれても「とにかく使う機会をつくる」ことが大切ですね。

次回は、「単語を覚える方法」についてお話しします。


記事を書いた人:平見尚隆(ひらみ なおたか)
香川大学 創造工学部教授。広島大学 客員教授。
広島大学附属高校、早稲田大学理工学部卒1986年 早稲田大学工学修士、1994年 ケンブリッジ大学博士号 (Ph.D.) 取得。マツダ株式会社入社後、研究開発に従事。Ford USA本社、Ford Europe、Ford Asia Pacific & Africaでは商品企画業務やそのマネジメントを担当。メキシコにおいてはマツダ関連現地法人の経営も行う。この間、Pennsylvania大学Wharton校にてExecutive Development Programにも参加。これらアメリカ、イギリス、ドイツそしてメキシコにおける海外経験をベースに、現在は大学においてエンジニアリングデザイン領域の教育・研究や国際化推進を担当。Professional Engineer(専門職技師、米国ミシガン州登録)、ケンブリッジ英語検定Proficiency レベル(最上級)、1級ファイナンシャル·プランニング技能士、中小企業診断士などの資格を有す。趣味は野鳥の写真撮影。

著者

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