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  • 著者のコラム

【英語学習のスパイス #1】

著者 Evine(恵比須大輔)

第1回:学び直しに使える! 知られざるおすすめ洋書3選

Hi、皆さん、2023年2月の連載を担当させていただくこととなりましたEvineこと恵比須です。
はじめてnoteに登場します。昨年8月にベレ出版より『Mr.Evineの英語塾 コア英文法』を出版させていただきました。

全4回の連載で、英語学習者にちょっと足りないもの・ことをテーマに私の指導経験を踏まえてお届けします。英語の学び直しのヒントになれば幸いです。まずは軽く自己紹介をさせていただきます。

現在、社会人向けの学び直しをテーマにした「やりなおし英語JUKU」(神戸、大阪)と学生向けの英語指導専門塾の「Evineの英語塾」(神戸)を3教室主宰しています。

教室を始めて15年になりますが、同じ学習内容でも、100人いれば100通りの教え方ができる自称ティーチング職人です。教室では「英文法を主体に英会話力を磨く」ことをコンセプトに、学習した英文法やフレーズが会話のどんな場面で使えるのか、どんな相手に対して、どのように伝えるのか、日常会話にひも付けたレッスンを心がけています。また『Mr. Evine(ミスター・エビン)』として英語書籍の執筆の他、コロナ禍で難しくなりましたが以前は学校教員や塾講師向けのセミナーで講演活動も行っていました。

さて、1回目は私がこれまでの学習で利用してきた洋書学習本の中でも特にオススメなものを3冊選書してみました

1冊目:『Diary Of A Wimpy Kid』(『グレッグのダメ日記』)

【邦訳本】

普通の少年のよくある日常や感情がユニークに描かれています。
話の内容的には小中学生がよく考えているようなことで、最初は自分の息子用に購入しましたが、大人の私も懐かしい気分で楽しく読めました。英語学習者にとっては、リアルな文法の使い方や言葉の使い方を発見し経験するリーディング素材として、とても優秀です。

それでは本書からクイズです。
次の話を英語ではどのように皆さんは話すでしょうか。

(1)「クリスマスはまだ1か月半も先だ」
(2)「パパのいいところは、怒ってもすぐにおさまって、それでおしまいになることだ」
(3)「お礼の手紙なんて、30分ぐらいで済むって軽く考えてた。ところが、いざ書こうとしたら、僕の頭の中が真っ白になった」

過去にこのようなことを実際に話すこともあったのではないでしょうか。いざ、英語で話そうとすると難しいかもしれません。本書では次のように表現していました。

(1)「クリスマスはまだ1か月半も先だ」
→ Christmas is a month and a half away.
「時の表現+副詞away」で「(開始まで)あと〜だ」「〜先だ」という意味になります。
(2)「パパのいいところは、怒ってもすぐにおさまって、それでおしまいになることだ」
→The good thing about Dad is that when he gets mad, he cools off real quick, and then it’s over.

〈The good thing is that …〉「良い点は…であることだ」の応用です。〈get+形容詞〉で「〜になる」、形容詞madはangryの口語表現、〈cool off〉 =〈 cool down〉「落ち着く」、〈real quick〉「すぐに」、〈be over〉「終わって」。
(3)「お礼の手紙なんて、30分ぐらいで済むって軽く考えてた。ところが、いざ書こうとしたら、僕の頭の中が真っ白になった」
→I thought I could just crank out my thank-you cards in a half hour, but when it came to actually writing them, my mind went blank.

〈crank out〉「次々と生み出す、作る」、〈when it came to ~〉「いざ〜になると」、〈go blank〉「真っ白になる、空っぽになる」。〈go+形容詞〉で「(ある状態)になる」という意味で、どちらかというと悪い方向の変化を表現します。

いかがでしょうか。
英文2の〈real quick〉は「〈副詞really〉+〈副詞quickly〉」を言い換えたものですが、realとquickは基本的に形容詞ですが、くだけた会話では、副詞として用いることも多いです。王道の英文法を学んでいると出会わない、いかにも口語的な印象です。

いずれも口語表現では決してマニアックなものではなく、リアルなアメリカ人の日常会話に飛び込んで学べる表現ばかりです。この本はある程度、中学英語や高校英語の基本文法や構文を理解し、生きた英語を「疑似体験」するのに適しています。大学生や社会人向けの仕上げの本としてgoodです。

『グレッグのダメ日記』の中の1ページ
グレッグ君の日記を通して、自然な言い回しを学べます。

イラストもほどよく挿し込まれ、理解を助けてくれますが、読み物なので日本人学習者を対象にした解説は一切ありません。まだ英文で書かれている内容を理解するのに自信がない場合には、翻訳本「グレッグのダメ日記」の利用がオススメです。逐語訳にはなっていませんが、内容は確認できるため併用されるとストレスなく学習に利用できます。

『グレッグのダメ日記』の1ページ

2冊目:『Perfect Phrases for ESL Conversation Skills』

本書は、自己紹介、電話、断り、了承、意見など、様々な場面でネイティブが使う自然な表現が分かりやすく網羅され、会話の辞書としてもコンパクトにまとまっており使い勝手が良いです。

また特筆すべきは、必要に応じて、表現が相手に与える響きの強さや丁寧度の順に並べられており、これは必見です。日本語ではほぼ同じ表現が、カタチが違えばニュアンスも異なることがしっかりと理解できます。

『Perfect Phrases for ESL Conversation Skills』の1ページ
表現のニュアンスの違いもシンプルに分かりやすく示されています。
『Perfect Phrases for ESL Conversation Skills』の1ページ

では本書からクイズです。

(1)英文Aを、より強く願望を伝える表現として、英文Bのように言い換えました。空所に当てはまる英語は何でしょうか。
(A)I want a cup of coffee.
(B)I’m (      ) for a cup of coffee.
(2)提案表現として、直接的な響きが強い順に並べてみましょう。
(A) Why don‘t you do volunteer work?
(B) May I suggest doing volunteer work?
(C) How about doing volunteer work?
(D) You might want to try doing volunteer work.

では、答え合わせです。

(1)I’m dying for a cup of coffee.「コーヒーが飲みたくして死にそうだ」
I’m dying は、die(死ぬ)を現在進行形にしたもので、〈be dying for~〉で「〜がほしくてたまらない、死にそうだ」と意味で、I want a cup of coffee.(コーヒーが欲しいです)よりも、感情が表れる願望をむき出しにした表現です。

(2)いずれも「ボランティアの仕事をしてはどうですか?」と相手に提案をする場面で使われますが、響きが異なります。まずは、英文のポイントを軽く解説します。

(A) Why don‘t you do volunteer work?
〈Why don’t you …?〉は「なぜ…しないの?」→「…したらいいのに!」と遠回しに相手の行動を促します。

(B) May I suggest doing volunteer work?
〈May I …?〉は「…してもよろしいでしょうか?」ととても丁寧に許可を相手に求める表現です。〈suggest -ing〉「…することを提案する[…してはどうかと提案する]」

(C) How about doing volunteer work?
〈How about …?〉は「…(して)はどうですか?」と相手に提案するだけでなく勧誘表現としても使われます。

(D) You might want to try doing volunteer work.
〈You might want to …〉で「~するといいでしょう、~してはいかがかと思います」という意味で、相手の意志を尊重させながらも何かの依頼や提案をする表現です。あまり馴染みのない表現かもしれませんが、これも日常会話でよく耳にします。

これらの英文を「直接的→間接的」な語順に並べ替えると、(C)→(A)→(D)→(B)の順番で間接的な響きが強くなり、この中で英文(C)が最も直接的な言い方です。これが正解。ちなみに、英文(C)よりもさらに直接的な伝え方の例として、本書では、Let’s do volunteer work.(ボランティアの仕事をしよう)を挙げています。

英語を話すことにおいて根本的に大切なのは、頭の中の経験値、いかに多くの英文のストックがあるかです。場面やテーマに合わせた英文サンプルが多ければ多いほど効率的に会話を進めていくことができます。また、表現の響きの強弱を理解しておくことは、コミュニケーションには欠かせない知識となり、本書ではそうした部分にも手が届く良書です。

3冊目:『THE NEW Children’s Encyclopedia』

その名の通り、子供向けの百科事典です。
意外と英語学習書籍のラインアップから外れていることも多いのですが、とんでもない。マストアイテムです。
子供向けというところがポイントで、比較的シンプルな説明でまとまっており、日本人学習者にとっては丁度良い情報量で、内容も大人でも十分楽しめる内容になっています。

『THE NEW Children’s Encyclopedia』の1ページ
子供用百科事典ですが、解説が平易で簡潔なので、学び直し英語の素材にピッタリ。
話題のストックを増やすのにも活用できる。

ではクイズです。空所に当てはまる英語1語を考えてください。
※英文(1)の空欄には同じ単語が入ります。

1)The (  ) is our nearest star. Without the (  ), Earth would be frozen and lifeless.

(2)(  ) is home to 10 per cent of all the active volcanoes in the world. It has about 40 active volcanoes, while another 148 are dormant.

では正解をチェックしましょう。

(1)Sun(太陽)
The Sun is our nearest star. Without the sun, Earth would be frozen and lifeless.
「太陽は地球に最も近い恒星です。太陽がなければ、地球は凍り、生命は存在しなくなるだろう」

最上級nearestや前置詞withoutと組み合わせた仮定法過去〈would be〉([もし〜がなければ]…になるだろう)など、学習素材として適度なレベルの表現で太陽について説明をしてくれていますね。
(2)Japan(日本)
Japan is home to 10 per cent of all the active volcanoes in the world. It has about 40 active volcanoes, while another 148 are dormant.
「世界の活火山の10%が日本に存在します。約40の火山が活火山であり、他の148の火山は、休火山です」

〈be home to ~〉「〜が存在する、〜の所在地である」。〈while another ~〉「もう一方は〜」。名詞volcano「火山」、形容詞active「活動をしている」、形容詞dormant「休止[状態]の」。

少し語いが難しい場合もありますが、豊富なイラストや写真がありますのでそれをヒントに、内容を大まかに捉え、時間がある場合は辞書を利用して精読するのが良いと思います。

初学者向けではありませんが、日本人学習者が不足しがちな英語に触れる経験値や背景知識を得るためには欠かせない1冊です。色んな百科事典が出ていますのでぜひ書店で色々とチェックしてみてください。


以上が、ぜひ英語学習のお供にしていただきたい3冊です。
このコラムを書くにあたり、自宅の書棚を眺めていましたが、私自身も参考文献系を好んで読んでいたんだなと改めて気づきました。やはり、「例文」のサンプルをいかに頭にインプットしておくかで、咄嗟の会話の質に大きな影響があると思っています。

現地の空気感や匂いに勝る経験はありませんが、それでも近い体験ができる自然な表現例は皆さんにとって有益だと思います。ぜひご参考ください。


記事を書いた人:Evine(エビン)
本名、恵比須大輔。神戸在住。株式会社evinet biz代表取締役。Teaching Director
神戸と大阪で社会人向けの「やりなおし英語JUKU」と学生向けの「Evineの英語塾」を主宰。10代~80代まで幅広い世代の方を対象に、コア英文法を軸に、実際に使える英語・英会話指導に従事している。観光専門学校での「英文法&英会話クラス」や「TOEIC」クラス、教員向けセミナーなど多方面で活動実績がある。著書に、『Mr.Evineの中学英文法を修了するドリル』『Mr.Evineの中学英文法を修了するドリル2』、『Mr.Evineの中学英文法+αで「話せる」ドリル』、『完全攻略!英検準2級』『動画でわかる! Mr. Evineの中学英文法を修了するドリル』(アルク)、『7時間で中学英語をもう一度やり直す本』(あさ出版)など多数。その他、学校専売品『英文法総合問題集 ES(エス)【はじめて編】/【高校入門編】/【高校標準編】/【高校発展編】』(アルク)など著書多数。趣味は旅行と映画鑑賞。

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