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『著者に聞くStudy Routineを教えてください!』#3 岡山徹先生

著者 岡山徹

Q1 : ウィークリースケジュールを教えてください。

 もう40年近くジャパンタイムズの姉妹紙『alpha』雑誌の映画欄でダイアローグの対訳と映画評論を書いているのですが、毎週、水曜日が締め切り日なので、それ以外は障がい者向けの送迎運転手のボランティアをやっており、あとは野球好きが高じて週4回の早朝、座業が主なため運動不足の解消も兼ねてと、近くの東京都の公園の野球場のグランド整備をやり、若者や柴犬との出会いを楽しんでいます。

Q2:最も勉強していた時期にどういう学習をしていましたか?また、それにどのくらい時間をかけていましたか?

 無駄に東京外語大の入学だけを目指して浪人していましたが、高校の担任の先生から推薦され、慶応に行くことになりました。浪人時代はお茶の水にあった駿台予備校の英語の名物講師(鈴木長十師、伊藤和夫師)の英語の本質を突いた講義やテキストが受験だけでなく翻訳家になってからも非常に役に立ちました。友達が通っていたので、時にはもぐりの受講生の時もありましたね(笑)。雨の日は傘をさして窓から覗いて受講してる人もいたぐらい熱気があってつらくもあり楽しかった青春時代です。

Q3:学習のきっかけとなる目標はありましたか?どんなものでしたか?

 中学での英語の成績は悪く、中二時代という雑誌の漫画付きの付録が入りやすくて、それが英語に興味をもったきっかけで、また文字のレタリングが趣味で、活字のようなノートを作るのが楽しく、きっかけは何でもいいと思うのです。低次元なきっかけでもね。目標は学費の安い都立高校への入学でした。家が裕福ではなかったのでね。

Q4:ご自身の学習においてもっとも役立った1冊を教えてください。

 1冊と言われれば、江川泰一郎先生の名著『英文法解説』というごつい本を二回も三回も通読して、英文法の鬼と呼ばれ、マニアックなことを調べてると、同級生からまた邪道かと笑われましたね。あと、辞書ではアメリカ放浪時代、サンフランシスコでたまたま買った、乱丁本のためセールで安かった、印欧語の語源まで突き詰めるThe American Heritage Dictionaryとの出会いでした。OEDでさえ探究はギリシャ・ローマ止まりですからね。あとは、翻訳家というのは辞書編纂者が考えた定訳では、雰囲気がつかみにくいので、自分の訳語を作るために、まず単語のコアというかイメージを掘り起こすため寝ながら引ける軽いペーパーバックのWebster’s New World Dictionaryを利用したり、起きてる時はCollinsのCOBUILDがとても役に立ちました。たとえば、hindsightというのは「後知恵」というやや古臭い訳が定訳になっていますが、僕は「結果論」という使ったりしました。たとえばHindsight is 20/20.という視力の数字を使った有名なフレーズは「結果論では何とでも言える」に。いかに身近な訳を選ぶかを大事にしています。

Q5:学習をサボりたくなった時、どうしていましたか?

 小学校時代はクラシック、中学に入ってギターを覚え、大学時代は三田に行ってからはプロのフォーク歌手のバンドでリード・ギターとして雇われていたので、大学はほとんどサボってましたから、逆にバンド練習をサボりたくなった時にたまに大学へ行ったら、一週間後に卒論試験だと知って、焦ってねじり鉢巻きで卒論書いて卒業したくらいです。

Q6:英語学習以外に大事なRoutineはありますか?

 15年間、飼っていた豆柴が認知症で死んで介護で苦労したので、人間の介護士はいますが、ペットの介護士は少ないので資格を取ったり、草野球のチームがピッチャー不足なので、必要に迫られ、40年かかってピッチングを極めました。スポーツ全般そうでしょうが、スポーツの鍛錬は何もかも忘れられるいい気晴らしです。それ以外は、クラオタ(クラシックおたく)なので、オーケストラのコンサートにしょっちゅう行ってます。オペラは感情がうるさいので苦手です。野暮ったいブルックナーは嫌いなので、複雑な音がからむマーラー好きです。

Q7:学生時代、英語は得意でしたか?

 高校時代は音楽に没頭して、英語はいつも赤点寸前で、卒業した浪人時代、文法の鬼だった僕は、高校の英語の先生に嫌味ばかり言われ意地悪されたので、先生がアルバイトしてた予備校に忍び込んで変装し、わざと質問して、先生が答えられないと、マクスを外して答えられないのか、「だらしないな、俺だよ」とやった若気の至りも。

Q8:座右の銘もしくは好きな言葉を教えてください。

 自分で編み出した経験則の、「言葉は嘘をつくけど、行動は嘘をつかない」です。「あなたが好き」と言う彼女が他の男をちらちら見ていたら、言葉は嘘だったことになります。言葉で君を応援するよと言ったのに、連絡もこない人の行動は嘘をつかないわけです。

Q9:尊敬する人物は誰ですか?

 ウィリアム・ジョーンズと牧野富太郎です。ジョーンズは確か大英帝国の一部だったインドの判事としてインドに派遣されたのですが、インドの古い言葉サンスクリット語を研究してるうちに欧米の言葉と似ていることに気づき、印欧語という概念を産み出した比較言語学の始祖です。日本のあらゆる植物を図鑑にした牧野さんが、ベロを出して写真に写ったアインシュタインのように、木の間からバア~と顔を出してる写真がありますが、こういう遊びの精神、遊学の精神がすばらしいです。好きこそ物のなんとやら的な精神を愛します。

Q10:英語学習者にアドバイスをお願いします。

 この記事を読んでいる人は少なくとも英語に興味がある人だと思うのですが、この中にもし大学の英文科を狙っている人がいたら、自分は文学が好きなのか、英語そのものが好きなのかをよく自己分析することをお勧めします。英文科内には英米の文学を学ぶ部門と、英語の成立ちなど英語そのものを研究する英語学という部門があり、その選択ミスをしないようそれをぜひ肝に銘じてください。たとえば、英話辞典を調べる時、いろんな意味が書かれていて、わちゃわちゃしてさっぱり覚えられないという経験ありませんか。実は、ほとんどの英米の辞書も日本のもいろんな意味を持つに至ったいきさつを横に置いて、忙しい現代人向けに頻度順に羅列してるからなのです。
 ところが、単語の歴史をひも解いていくと、どうしてそんなにいろんな意味が出てきたのか、行きがかりの流れをつかんでしまうと、一気通貫でイメージがつかめるようになります。というわけで、〝番宣〟になって恐縮ですが、今、そういう本をベレ出版で刊行の準備中で、翻訳家の私家版単語帳のような本を15年がかりで完成しようとしています。
 そんなわけで、辞書を引いた時に、面倒がらずに語源を調べる癖をつけるようにすることを強くお勧めいたします。店頭に並ぶ日を楽しみに!!

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山中湖の別荘にて

この記事を書いた人:岡山徹 翻訳家。コラムニスト。作家。 
東京生まれ。
慶応大学英文学部米文学科を卒業。21才頃から雑誌『キネマ旬報』で10年間シナリオ翻訳を担当。
ジャパンタイムズの姉妹誌『週刊Alpha』でシナリオ対訳付きの映画コラムを約35年間にわたって長期連載中。
主な訳書:『ジョン・レノン』(音楽之友社)、『ビートルズ全曲解説』(東京書籍)など、映画字幕作品も多数あり。
  主な著書:小説『夏空よりも永遠に』(東京書籍)、『語源でたどる英単語まんだら』(小学館)、『字幕からこぼれる言葉たち/映画でスラスラ日常英語』(同)、『海峡を渡るバイオリン』(河出書房新社)、『ひとり介護』(ダイヤモンド社)など。

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