書籍詳細

あれもこれも地理学
文化・社会・経済を地理学で読み解く

あれもこれも地理学
著者名
富田啓介
ISBN
978-4-86064-608-0
ページ数
304ページ
サイズ
A5判 並製
価格
定価1,870円 (本体1,700円+税10%)
発売日
2020年02月13日発売

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内容紹介

「遠距離恋愛はなぜ生まれるのか?」―それが本書の地理学と何の関係があるのか。そう思われた方がいらっしゃるかもしれません。じつは関係があります。地理学は空間の科学です。「場所」や「地域」をキーワードにあらゆることを分析します。自然環境はもちろん、人が作り上げた文化や社会にまつわる出来事や現象についても「どこで起こっているか」「なぜそこで起こっているか」を明らかにしていきます。冒頭の「遠距離恋愛」も場所と人の空間の移動が関わってくるので、当然、地理学的な見地から分析することができるのです(詳しくは本文で)。本書は、他にも「近郊の街はなぜ若い人が多い?」「ビール工場はなぜ街の中にある?」など、社会や文化、経済に関わる、いわゆる「人文地理学」の基本的な考え方や知識を紹介し、具体的で身近な事例を通してわかりやすく解説しました。

著者コメント

(「はじめに」より)
 地理学は、空間の科学です。「場所」や「地域」をキーワードに、世界のあらゆることを分析します。決して「何が、どこにある」を覚えるだけの退屈な学問ではありません。
 地理学は、何かがそこにあるわけ、出来事や現象がその場所で起こるわけを考えます。私たちの暮らす地球表面は、人が作り上げた文化や社会、おのずからそこにある自然で構成されています。それらを見つめると、数えきれないほどの出来事や現象から成り立っていることがわかります。そのすべてを対象として「どこで起こっているのか?」を知り、そして「なぜそこで起こっているのか?」を明らかにしてゆきます。
 この前の休みに出かけた遊園地。今日食べたお米を生産している田んぼ。いつか出張に行くことになるかもしれない外国の街。これらのものが「そこ」にあるのは、偶然ではありません。必ずそれなりの理由があります。それを探ることが地理学です。
 地理学はまた、様々なものごとが地球表面を移動してゆく様を眺め、分析します。地球表面のほぼ全域に分布し、せわしく移動しながら活動する生物、人はその格好の観察・分析対象です。
 人の移動には、通勤・通学のように毎日繰り返されるものもあれば、観光旅行のように不定期に行われるものもあります。さらには、元の場所に戻ってくることを前提とした移動もあれば、移住や移民のように、移動した先に留まるような移動もあります。移動の理由や手段には様々なものがあるでしょうし、大勢が移動すれば、人の増える地域や減る地域も出てくるでしょう。人々が移動先でまとまって暮らせば、そこで独特の言語や文化が発達しますが、しばらくして異なる言語・文化を持つ人々が新たにやってきたら、どんなことが起こるでしょうか。このように、人の移動やその理由・手段、地域によって異なる人口の増減、文化の分布や伝播を見つめるのも、地理学です。
 人が様々な場所に住んでいるということは、製品や情報もまた、あらゆる場所で生産されることを意味します。そしてそれらは、流通網によって地域を越えて飛び交うことになります。身の回りを見渡してみましょう。今着ている服、さっき食べた料理の材料、机の上にある時計や電話やパソコンや鉛筆――それらの作られた場所は、調べがつくならば、おそらく日本各地、いや世界各地に散らばっているはずです。どこにどんな産業があり、そこからどのように産品が運ばれ、私たちの手元に届くのか。こうしたことに注目するのも地理学です。
 さらに地理学は、ダイバーシティ(多様性)が生まれるわけを考え、それを理解する方法を探ります。「ところ変われば品変わる」という言葉があります。この言葉が意味するように、地球表面に分布する様々なものごとは、地域ごとに特色をもって存在しています。ひっくり返せば、場所の違いは、ものごとのダイバーシティを生み出しているとも言えます。
 気候・地形といった土地に固着したダイバーシティがある一方で、それに育まれた人や物、文化や社会は、地域ごとの特色を保持したまま自在に地表を移動します。その結果、一つの地域の中にもそれらが交じり合う状況が生まれます。この状況が、競争や軋轢を生む場合もあれば、融合して新しい何かが生まれる場合もあります。どのように場所の違いがダイバーシティを生み出しているのか、異なる特色を持った人やものごとがある場所で交じり合うといかなることが起こるのか、そのようなことを見つめるのも地理学です。
 この本では、以上のような視点から、身近な社会、特に日常の生活の中に見られる様々な出来事や現象を探ります。
 第1章では、遠距離恋愛、海外からやってくる味噌汁の具、街の中にあるビールの工場、電車の中の多国語アナウンス、郊外に現れた住宅団地、増えている田舎暮らしといった事柄を取り上げます。地理学の目から、それらはどう理解されるのでしょうか。地理学の中でも特に人の文化や社会を扱う「人文地理学」の基本的な考え方を、なるべく具体的で身近な事例を通して理解できるようにしました。
 第2章では、余暇活用・地域おこし・環境問題といった現代の社会が抱えるテーマを取り上げ、これらのテーマを地理学がどう見るのか、また、これらのテーマに対してとられているアプローチは、地理学の視点からどう評価できるのかを紹介しました。いわゆる社会問題を取り上げることになりますが、解決策を示すのではなく、皆様方がご自身で考える際のヒントとなることを目指しました。
 この本は地理学の中でも、文化・社会に関わる人文地理学分野を中心にまとめています。
 地理学のもう一つの分野、自然地理学(気候・地形・植生をはじめとする自然環境に関する分野)も併せて学びたい方は、姉妹本の拙著『はじめて地理学』をぜひご覧ください。

著者プロフィール

富田啓介(とみた けいすけ)
1980年愛知県生まれ。2009年、名古屋大学大学院環境学研究科修了。博士(地理学)。名古屋大学大学院環境学研究科研究員、法政大学文学部助教を経て、2016年より愛知学院大学教養部講師。専門は自然地理学、特に地生態学。主な研究テーマは、里地里山における人と自然の関わり、ため池・湧水湿地をはじめとする生物生息地の成り立ちの解明と、その保全・活用。主な著書に、『里山の「人の気配」を追って』(2015年、花伝社)、『はじめて地理学』(2017年、ベレ出版)がある。趣味は山歩きであるが、数年前に子供が生まれてからは難しく、家の裏での畑仕事が息抜き。

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