花と昆虫のしたたかで素敵な関係 受粉にまつわる生態学
花粉の数だけ、植物と昆虫のドラマがある!
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- 著者名
- 石井博
- ISBN
- 978-4-86064-610-3
- ページ数
- 291ページ
- 判型
- 四六判 並製
- 価格
- 定価1,980円(本体1,800円+税10%)
- 発売日
- 2020年03月11日発売
- 立ち読み
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PDFファイル(9MB)
- 目次
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PDFファイル(249KB)
内容紹介
陸上植物種の約9割は被子植物で占められています。
このように陸上での繁栄を謳歌している被子植物のうち、さらにその約9割もの種は、
受粉のための花粉の運搬(送粉)を、動物(主に昆虫)に依存しているといわれています。
なぜ、これほどまでに多くの植物種が、受粉を動物たちに頼るようになったのでしょうか。
植物が花を咲かせる目的(種子をつくる)は、どの植物種でも同じはずなのに、
なぜ植物が咲かせる花はこんなにも多様なのでしょうか。
花と、花粉を運ぶ動物たちにまつわるさまざまな話題を、最新の知見も取り入れながら、
たくさんのカラー写真とともに、わかりやすく丁寧に解説します。
Contents
1. なぜ多くの植物種が動物に受粉を依存しているのか?
2. さまざまな送粉者
3. 絶対送粉共生
4. 訪花者による花の選択――植物の多様性を支える行動
5. 騙す花、奪う訪花者
6. 送粉者を操る植物の戦略
7. 送粉系群集
8. 壊れゆく植物と送粉者の関係――実りなき秋は来るのか…
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著者コメント
(「まえがき」より)
この本は、花や虫に興味をもっていて、少し踏み込んだことまで学んでみたい、という人や、これから送粉生態学(植物の受粉に関わる生態学)について学んでみたい、という人たちに向けて書いたものです。
花や送粉者(花粉を運ぶ動物たち)について書かれたこれまでの本は、一部のトピックを取り上げたものを除けば、専門家を対象にしたものか(とっても難しい!)、小さな子供向けに書かれたもの(とっても簡単!)ばかりで、その間を埋めるような本はほとんどありません。誰かがそのような本を書いてくれたらなぁ、と思っていたところにお声がけいただいたのが、この本を書くことになったきっかけです。
ですから、花と送粉者の関係について、なるべく網羅的に、それなりに踏み込んだことまで、最近の話題も交えながら、専門的な知識がなくても理解できることを目標にして書いたつもりです。
19世紀にイギリスの詩人ジョン・キーツは、自身の詩のなかで、ニュートンが虹の科学的特性を解明したことで、虹の詩的(抒情的)な美しさが奪われてしまったと嘆いたといいます。これに対し、現代のイギリスの生物学者であるリチャード・ドーキンスは、科学やそこから得られた知識は、自然の詩的な美しさを剥奪するものではなく、むしろ、自然から受ける感動や、自然に触れたときに感じる、ある種の不思議な感覚「センス・オブ・ワンダー(sense of wonder)」を、さらに深く呼び起こすものだと反論しました。
私は全面的にドーキンスに賛成です。花は、その美しさゆえ、昔から多くの人々を感動させ、魅了してきました。しかし、花や、花に関わる生き物たちから得られる感動が、科学者たちが解き明かしてきた、花をとりまく、多彩で、素敵で、面白い、そして時に信じられないような「物語」を知ることで、さらに大きく、奥深いものになることは間違いありません。
この本を通じて、読者の皆さんとそんな感覚を共有できれば、それに勝る幸せはありません。…
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石井博(いしい ひろし)
富山大学 理工学研究部 教授。
専門は生態学。
理学博士(東北大学)。
北海道大学、カルガリー大学、東京大学などを経て、2017年より現職。
※この情報は 2020.03.11 時点のものです。