初級文法を中心に中級までの内容を、豊富な例文と一緒に初心者でもわかりやすいように丁寧に解説します。基本的な発音解説の後、前半では動詞の活用に慣れると同時にスペイン語の基本的な構造について学び、後半では、時制やseの用法、特に接続法については類書には見られないほど多くのページを割いており、会話や文章の内容を正確に理解できるようになるまで詳しく解説します。学習後には中級程度の読み物が読めて、簡単な会話ができるようになるはず。スペイン文学に魅せられ、多くの文学作品の研究と翻訳に携わってきた著者が、文法に文学の風味を加えた入門書の決定版です。
書籍詳細
本気で学ぶスペイン語 [音声DL付]
つまずきやすい部分を徹底解説。基礎を完成させるための本格的な入門書!
![本気で学ぶスペイン語 [音声DL付]](/books/imgresize/829.jpg/175/0)
- 著者名
- 佐竹謙一
- ISBN
- 978-4-86064-689-9
- ページ数
- 376ページ
- サイズ
- A5判 並製
- 価格
- 定価2,860円 (本体2,600円+税10%)
- 発売日
- 2022年04月26日発売
内容紹介
著者コメント
(「はじめに」より)
長年スペイン文学に魅せられ、文学作品の研究および翻訳に携わってきましたが、このたびご縁があってスペイン語の文法書を執筆させていただくことになりました。そこで筆者としては、特に学生時代にスペイン語文法を勉強していてよく理解できなかった項目に注目し、また 3 年間スペインのグラナダ大学へ留学したときに授業で学んだスペイン語文法にまつわるあれこれを思い出しながら、1 冊にまとめ上げてみることにしました。
方向性としては、基本的に初級文法を中心に、中級文法にまで範囲を広げました。学習後に中級程度の読み物を読んだり、簡単な会話文を口にしたりできるようになれるのが理想です。そのためにも、筆者が学生 · 院生時代にもっと説明が欲しかったと感じた項目(特に時制、se の用法、接続法)や、気づかずに見すごしてきた項目について、詳しくとり上げることにしました。
内容としてはできるだけレベルを落とさず、専門的で複雑だと思われる文法事項を初心者にもわかりやすいように噛み砕いで説明したつもりです。とりわけ接続法に関しては多くのページを割きました。接続法がきちんと理解できていれば、会話や文章の内容をより正確に理解し、「話し手/書き手」の気持ちを充分に味わえるからです。また各課で多くの例文をとり入れた理由は、外国語習得の近道はできるだけ多くの文章に触れることだと思うからです。
本書には、文法事項とは別にスペイン文学にまつわるコラムをいくつか設け、文学的要素も加えました。既存の文法書とは一味違った構成になっていますが、文学離れが激しい昨今の事情を鑑み、文法に文学の風味を加えることによって、文学と語学の距離が少しでも縮まればと願ってのことです。もっとも、文学と語学はきってもきれない関係にあることは言うまでもありません。スペイン文学は、他のヨーロッパ文学に比べると全般的にリアルでグロテスクな要素が多いかもしれませんが、それでも文学世界を覗き込むと、そこに描かれている複雑な人間模様から、たとえ反面教師的なかたちにしろ、何か得るものはあるはずです。また、「情熱的で明るい国民性」などという一般的なスペイン人のイメージに加えて、彼らの気質や感情の起伏なども知ることができます。実際にテクストを手にとってみると、他のヨーロッパ文学とは一味違う、スペイン文学独特の世界に気づくはずです。そのためにも文法の基礎はしっかりと身につけることが大切です。
本書作成にあたり、以下のことに留意しました。
1. 第1課は、一応目をとおしておかれると後々発音にわずらわされることはないと
思います。幸いスペイン語の発音は日本語の発音と音がよく似ていますので、
音声等の専門的なことはその分野の専門家にお任せするとして、ここでは基本
的な説明にとどめました。
2. 全体の構成は、既存の文法書の項目配置とは多少異なるかもしれませんが、第
10課までは「直説法現在 · 現在完了」を中心に組み立ててあります。
まずは「現在」を軸とする各種例文に触れ、スペイン語の動詞の活用に慣れる
と同時に、スペイン語の基本的な構造を理解していただくのが狙いです。
3. 今回初めて文法書を作成するにあたり考えさせられたことは、スペイン語の短
い例文の訳し方です。文学作品等とは違い、どれも前後に文脈がないだけに、
スペイン語の文法機能を尊重しながら訳そうとすると、人称代名詞を多用しな
ければならず、その度に訳がぎこちなくなったり、くだくだしくなったりして
しまいがちです。しかし、本書では誤解を招かないためにも、多少のぎこちな
さは残りますが、逐語訳が必要な場合にはそのような形で訳すことにしまし
た。
4. 例文については、前述したとおりスペイン語に親しむための基礎づくりに欠か
せないと考え、その数をできるだけ増やしました。中には復習を兼ねて同じ語
彙をくり返したり、似たようなフレーズを使ったりもしています。
5. スペイン語の例文で、[ ] 内に記した語は、その前に置かれた語を代替するも
のとして使用できるという意味です。
(例)“Podéis sentaros donde sea [queráis]”.
きみたち、どこでも〔好きな場所に〕座っていいよ。
また、( )内の語は省略可能です。
(例)“(Yo) no tomo café”. — Yo tampoco (tomo café).
私はコーヒーを飲まない。— 私も飲まない。
なお、執筆にあたり辞書類のみならずスペイン語文法の学習書も大いに参考にさ
せていただきました。執筆された方々にはこの場をお借りして感謝申し上げます。それからスペイン語のネイティブチェックは、元関西外国語大学非常勤講師で現在は市井でスペイン語を教えている Patricia Valdez Satake にお願いしました。時には、筆者の瑣末な質問に対して複数の辞書や文法書を繙きながら真摯に向き合ってくれ、また必要と思われる例文が即座に思い浮かばないときも時間をかけていっしょに考えてくれました。とても感謝しています。また、快くイラストを描いてくださった誉田百合絵さんにお礼を申し上げます。
本書をとおしてスペイン語文法を習得したあと、なるべく時間をあけずにスペイン語で書かれた書籍 · 雑誌等に挑戦されることをお勧めします。
この文法書が少しでも読者のお役に立てれば幸いです。
著者プロフィール
佐竹謙一(サタケ・ケンイチ)
金沢市生まれ
イリノイ大学 大学院博士課程修了(Ph.D.)
南山大学名誉教授
【主な著訳書】
『現代スペイン演劇選集』(水声社、1994年)
『スペイン黄金世紀の大衆演劇』(三省堂、2001年)
『浮気な国王フェリペ四世の宮廷生活』(岩波書店、2003年)
『スペイン黄金世紀演劇集』(共訳/名古屋大学出版会、2003年)
『ラテンアメリカ現代演劇集』(水声社、2005年)
『カルデロン演劇集』(名古屋大学出版会、2008年)
『概説スペイン文学史』(研究社、2009年)
マンリーケ『父の死に寄せる詩』(『死の舞踏』収録、岩波文庫、2011年)
エスプロンセーダ『サラマンカの学生 他六篇』(岩波文庫、2012年)
『スペイン文学案内』(岩波文庫、2013年)
ティルソ・デ・モリーナ『セビーリャの色事師と石の招客 他一篇』(岩波文庫、2014年)
『ドン・キホーテ 人生の名言集』(共編訳/国書刊行会、2016年)
モラティン『娘たちの空返事 他一篇』(岩波文庫、2018年)
『カルデロンの劇芸術―聖と俗の諸相』(国書刊行会、2019年)
『スペイン語の感情表現集』(共著/白水社、2021年)ほか