2025.06.27 著者のコラム 児童文学が生まれた風景:第4回 ハリー・ポッターシリーズとスコットランド 著者 牟田有紀子(むたゆきこ) 目次1. エディンバラと魔法の物語のつながり2. 聖地となったカフェ「エレファント・ハウス」3. ホグワーツを思わせるエディンバラ城とスコットランドの風景4. トム・リドルの墓とグレイフライアーズ墓地の魅力5. 魔法の体験ができるバー「Department of Magic」6. 現実とファンタジーの境界を歩く7.おわりに 1. エディンバラと魔法の物語のつながり ハリー・ポッターの世界を現実の風景のなかに見つけたいと思ったときには、ロンドンよりもスコットランドの首都エディンバラを訪れるのがおすすめです。シリーズの作者であるJ.K.ローリングが物語の構想を練り、実際に執筆した地がこの街だからです。石造りの古い建物や丘の上にそびえる城、重厚な墓地、霧に包まれた路地など、エディンバラの街並みにはどこか魔法めいた空気が漂っています。 (霧のエディンバラ) 2. 聖地となったカフェ「エレファント・ハウス」 エディンバラの中心部には、「エレファント・ハウス」というカフェがあります。ローリングはこのカフェで第1巻『ハリー・ポッターと賢者の石』を執筆していたと伝えられています。ハリー・ポッターの聖地として多くのファンが訪れ、カフェのトイレの壁にはファンからのメッセージがびっしりと書き込まれています。なお、現在は火災の影響で一時的に閉店していますが、再開を待ち望む声が国内外から寄せられています。 (火災前のエレファント・ハウス) 3. ホグワーツを思わせるエディンバラ城とスコットランドの風景 (崖の上に建つエディンバラ城) 街の西に位置するエディンバラ城も、ファンの注目を集めるスポットのひとつです。火山岩の上に建てられた中世の城で、その荘厳な佇まいは崖の上にそびえるホグワーツ魔法魔術学校を彷彿とさせます。 実際、ホグワーツのイメージにはスコットランドの風景や建築が大きな影響を与えたと考えられています。映画でホグワーツ特急が走る鉄橋として使われたグレンフィナン高架橋やホグワーツ城のモデルとなったと言われているグラスゴー大学など、スコットランドには多くのハリー・ポッターゆかりの地があります。 (グラスゴー大学) 4. トム・リドルの墓とグレイフライアーズ墓地の魅力 もうひとつ印象深い場所が、「グレイフライアーズ・カークヤード」という墓地です。ここには Thomas Riddellさんのお墓があります。ローリングはこの墓地を訪れ、このお墓からヴォルデモート卿の本名を「トム・リドル」に決めたと言われています。私が訪れたときにはThomas Riddellさんのお墓しか見つけられなかったのですが、他にも登場人物たちの名前を思わせるお墓があるそうです。ハリー・ポッターファンの聖地になっており、下の写真を撮ったときには、マントを着け、杖をもった観光客が呪文を唱えながらお墓参りをしにきていました。 Thomas Riddellと刻まれています 5. 魔法の体験ができるバー「Department of Magic」 エディンバラの魅力は、こうした名所だけではありません。街を歩いていると、魔法の世界をテーマにしたカフェやバーに出会うことがあります。その代表格が、「Department of Magic」というバーです。ここではまるで魔法薬の授業のように、自分で色とりどりのドリンクを混ぜて調合する体験ができます。脱出ゲームにも参加することができます。エンターテインメント性が高く、魔法の世界に夢中になれる空間です。大人の皆さん、大人になったからこそ行けるファンタジーの世界があります。人気店なので予約必須です。https://www.departmentofmagic.com/(Department of MagicのURL) 6. 現実とファンタジーの境界を歩く スコットランドにはハリー・ポッターにまつわる名所が数多く存在していますが、それらをめぐる旅は単なる聖地巡礼にとどまりません。石畳の道、重厚な建物、ヴィクトリア様式の装飾、曇天に包まれた丘の風景など、この都市そのものが魔法の物語を育んできたことを実感させてくれます。たとえば、魔法省の厳格さやホグズミードのにぎわい、ホグワーツの重厚な雰囲気は、エディンバラの歴史と文化に裏打ちされたリアリズムに支えられているのです。 7.おわりに 児童文学は子どもだけのものではありません。大人が児童文学を読むと、子どものころには意味がよくわからなかった場面の面白さに気づいたり、気づかなかった魅力を掘り起こしたり、必ず楽しい経験をすることができます。平易な英語で書かれている作品も多いので、英語学習者にとっては良いリーディング教材にもなります。ご紹介したような児童文学の風景を思い浮かべながら、原作を読んでくださると嬉しいです。ここまでこのコラムを読んでくださり、ありがとうございました。 牟田有紀子(むたゆきこ)城西大学経営学部准教授。宮崎県宮崎市出身。早稲田大学文学部英文学コースを卒業後、同大学大学院文学研究科修士課程英文学コースおよびイギリス・レスター大学ヴィクトリア朝研究科で修士号を取得。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程、同大学文学学術院英文学コース助手を経て、2018年より現職。専門分野は英語圏児童文学・文化研究で、特に少女小説や少女文化に焦点を当てている。修士課程ではフランシス・ホジソン・バーネットの研究に従事し、博士後期課程進学から現在に至るまでイギリス・ヴィクトリア朝の少女雑誌の研究をしている。