コラム

ベレー帽の忘れ物

絲山秋子さんのトークイベントにて

2月8日の大雪の日、絲山秋子さん、伊藤比呂美さん、阿部日奈子さんの朗読とトークイベントが日本近代文学館で行われました。3人とも会いたい人ばかりで、それもこの組み合わせは夢のようでした。休日の住宅街は車も人通りもなく、降り積もった新雪を踏みしめながら歩く高揚感は最高の気分でした。絲山秋子さんは、自作の短編を朗読されたのですが、声も雰囲気も想像していたとおりでした。『沖で待つ』の頼もしい営業マンのようで、きちんとさわやかに受け答えされていたのが印象的でした。会場で販売していた絲山秋子さんの新作を買って読んだら、また絲山秋子さんの本を全て読みたくなり、初期の本から片っ端に読んでいます。『イッツ・オンリー・トーク』(文庫)の解説を書店の方が書いているのですが、その一言一言がストレートに伝わってきて面白かったです。書店での仕事ってこんな面白さかなぁ…と想像していたのですが、その辺りのことが伝わってくる解説文でした。その解説文には、「書店員を19歳から始めて直感だけで仕事をしてきたこと。絲山さんの処女作『イッツ・オンリー・トーク』の配本の日に一目惚れして出版社に電話して追加、純文学を6面も陳列した」そうです。その後、絲山さんは『沖で待つ』で芥川賞を受賞されたのですが、その時もその書店員の上村さんは大泣きされたそうです。作品に一目惚れして自分の勘だけでどのくらい自由に展開できるものかわからないのですが、その時の仕事のやりがいというか達成感は想像できます。絲山秋子さんは、営業の仕事を10年やってきた方なので、現場に対する信頼も大きいのでしょう。作品に一目惚れする、編集者の仕事の面白さも近いものがあります。

 このベレー帽の忘れ物、編集者のひとりごとというか、雑感を中心に書いてきました。次回からは6人の編集者で交代で書いていきます。これからもどうぞよろしくお願いします。

2014年04月07日

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