2025.10.17 NEW BERETimes 大人も驚く!? 栄光学園の“好き”を探求する放課後探訪記 〜生物研究部編〜 第2回:栄光学園 生物研究部編 目次蝶、魚、キノコからシマヘビまで—「好き」がつなぐ50人の若き研究者たちみんなで考える「教室」若き研究者たちの部屋後輩へと受け継がれる技と情熱 個性が生きるフィールド-学園内にある裏山栄光祭で輝く「好き」の結晶未来へ挑む探究心 蝶、魚、キノコからシマヘビまで—「好き」がつなぐ50人の若き研究者たち 栄光学園の生物研究部は、中高合わせて約50名が所属する大所帯。蝶や魚、キノコ、ヘビなど研究対象は実に多様であり、部員一人ひとりが「好き」を原動力に探究を深めている。取材を通じて感じられたのは、自然番組さながらの迫力と、研究に向き合う真摯な姿勢であった。 生物研究部の部員たち みんなで考える「教室」 取材当日、部では水槽の漏電事故への対応について話し合いが行われていた。顧問の解説をきっかけに、生徒たちは活発に意見を交わす。そこにあったのは一方的な授業ではなく、互いに学び合う「ゼミ」のような空間であり、研究と教育が一体となった学びの場であった。また、生物研究部では成果を個人にとどめず、パワーポイントで発表する活動もしている。互いの発見を共有する時間は研究を深化させる貴重な場であり、大学のゼミのような空間であった。 生物研究部のミーティングの様子 若き研究者たちの部屋 部室を案内してくれたのは高校生2年生のキャプテン。彼はわずか2歳の頃から蝶に魅せられ、標本づくりに情熱を注ぎ続けてきたと語る。栄光学園を志したのも、学園の敷地内にある広大な裏山で思う存分、生きものを採集できるという、この環境ならではの魅力に惹かれたからだという。 「ミヤマカラスアゲハは同じ種類でも春型と夏型では大きさがまったく違 うのです」と情熱を込めて語りながら見せてくれた標本箱には、長年の経験と自然への愛情が凝縮されていた。 ギンボシヒョウモンの異常型を採集し、専門誌『月刊むし』に報告が掲載されたこともある。さらに魚の研究にも取り組み、沖縄で素潜りして採集した魚を部室で飼育中とのこと。彼の三浦半島での調査結果は論文にまとめられ、神奈川県における初の標本記録として学術的価値を持つ。冒険談さながらの活動でありながら、生物研究部としてその一つひとつが確かな研究成果へと結実している。 生物研究部キャプテン 後輩へと受け継がれる技と情熱 蝶の標本づくりの技術は、キャプテンから後輩へ直接指導されていた。世代を超えて磨かれていく展翅の技は、研究の精神そのものであり、50人規模という大所帯でありながら「好き」を共有する強固な一体感を育んでいた。 蝶の標本づくりを行う生徒 個性が生きるフィールド-学園内にある裏山 部室には数えきれないほどの生物が飼育されており、部員たちは各自のテーマに沿って研究を進めている。沖縄で採集したマングローブやシオマネキを育てたり、埼玉に自ら足を運び、粘菌やキノコを調べに行く生徒もいる。取材中には生徒たちがシマヘビを見せてくれた。二子玉川で採集された個体とのこと。 「目が白くなっていますよね。これは脱皮を控えているんです。脱皮の時 期はあまりマウスを食べてくれないんですよ。せっかくの取材 だったので食事シーンをお見せしたかったんですが…(笑)」 と情熱を込めて語ってくれた。 栄光学園の敷地にそびえる裏山にはアオダイショウの姿も見られ、その個体が部室にも持ち込まれていた。生徒たちにとっては、学校での何気ない日常生活そのものが、すでに貴重なフィールドワークの延長なのである。 生徒が沖縄で採集した生きものたち 左:栄光学園の裏山で採集れたアオダイショウ 右:二子玉川で採集されたシマヘビ 栄光祭で輝く「好き」の結晶 文化祭「栄光祭」では、各部員の研究をまとめた部誌を刊行する。原価率98%で制作されるこの冊子は、生徒たちの「好き」の集大成であり、毎年完売するほどの人気を誇る。きっとこの部誌に記載されている氏名から未来の研究者として活躍する生徒もいるだろう。 部活動の様子 未来へ挑む探究心 部員たちの進路は農学部志望から文系まで多彩である。しかし根底に共通するのは"未知に挑む探究心"だと感じる。「この部室にいる生物が何種類いるのか、正確にわかっていません」というキャプテンの言葉は、生物研究部の多様な活動の核心を突いているように感じる。蝶から魚、キノコ、ヘビまで生徒の好奇心の数だけ生き物たちが教室にいる。自分の好きなものを追い続ける生徒たちの姿は、研究者の卵であると同時に、好奇心を武器に未知を切り拓く冒険者の姿でもあった。 栄光学園中学高等学校神奈川県鎌倉市にある1947年創立の私立男子校で、カトリック修道会イエズス会を母体とする完全中高一貫教育のミッションスクール。「Men for others, with others」(他者のために、他者とともに)を教育精神に、学力だけでなく、他者と協働し社会に奉仕する精神を育むことを重視している。毎年およそ3人に1人が東京大学に進学する国内屈指の進学校として知られる一方、東京ドーム2.4個分に及ぶ緑豊かなキャンパスや、卒業生の隈研吾が監修した校舎などがある。卒業生に養老孟司、隈研吾、古川聡など、各分野を代表する著名人が名を連ねる。