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大人も驚く!? 栄光学園の“好き”を探求する放課後探訪記 〜英語部編〜

栄光学園とは

 栄光学園は鎌倉に位置し、毎年およそ3分の1の卒業生が東京大学へ進学する国内屈指の名門・中高一貫校である。卒業生には養老孟司、隈研吾、古川聡など、各分野を代表する著名人が名を連ねる。
 校舎そのものも隈研吾の監修による建築で、緑豊かな環境と調和した美しい空間を誇る。図書館には約6万冊の蔵書が並び、その一角には卒業生の著作を集めた棚が設けられている。
 しかし今回注目するのは、“課外活動”である。受験勉強に直結するものではないが、そこには「学歴よりも大切な学び」、効率やコスパでは測れない価値が確かに息づいているのではないか―自分の“好き”を追い求める生徒の姿をヒントに編集部が取材した。

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栄光学園の校舎と図書館

第1回:栄光学園 英語部編

英語部の勉強法

 「学校の授業や教科書だけではありません。スピーチ動画や音源、ディベ
  ートの実践など、あらゆる方面から英語を学んでいます」
そうキャプテンは語ってくれた。
 栄光学園の英語部は、英語ディベートを活動の中心に据え、大会での上位入賞を目標に研鑽を重ねている。週に数回の練習ではスピーチやリスニングを徹底的に繰り返し、実戦力を養成。日本代表や世界代表のディベート動画をYouTubeなどで視聴し、その技術を取り入れながら大会に挑む姿勢は真剣そのものだった。ここには受験勉強だけでは得られない、英語部ならではの豊富なアウトプットの機会が息づいている。
 キャプテンによれば、音源を聴き取りスピーチを書き起こす訓練やディベートによってリスニングと発音を磨き上げる。加えて動画などを最大限に活用し、日々の練習を通じて「聴く・話す・考える」を一体化させたディベートに実践的な英語力を培っている。

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英語部のキャプテン

即興型と調査型―二つのディベート形式

 栄光学園の英語部はディベート大会に向けて、主に「即興型」と「調査型」の二種類のグループに分かれるという。
 即興型は与えられたテーマについて、大会で限られた時間でディベートを行う。部員たちは「即興ディベート」の練習を積み重ね、即時の反応力と論理的な思考を鍛える場となっている。
 一方、調査型は年間を通じて一つのテーマを追究する形式である。PCなどを使いながらエビデンスを集め、膨大な資料を蓄積するシンクタンクとなる役割。毎年テーマは変わり、政治、経済、軍事、医療、原発など多岐にわたる。今年度のテーマは「16歳以下のSNS利用禁止」。試合直前に賛成か反対かが決まり、両論の準備を徹底的に行うそうである。
「ディベートは即興のように見えますが、勝敗を分けるのは9割が準備なのです」と顧問は語る。反論を予想し尽くす地道な作業が、ディベートの根幹を支えているのだ。

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ディベートのテーマについて調査する生徒たち

AIでは勝てないディベート

 テーマ調査においてはAIも活用されている。ただし大会中の使用は禁止されており、実際にはアイデア出しや情報整理の補助にとどまる。顧問はこう語る。

 「ディベートというものはAIが勝てる競技ではないです。勝敗を決めるの
  は最終的に人間のストラテジー(戦略)と論理です」

 AIは確かにアイデア出しには使える。しかし、勝つための思考回路や議論を組み立てる戦略までは教えてくれないと顧問は語る。ディベートで必要とされるのは、相手の反論を読み、瞬時に戦略を練り直す柔軟な頭脳。だからこそAIはあくまで補助的な存在にすぎず、最後の勝負を決めるのは人間自身の知恵と経験であると感じた。

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ディベート練習の風景

自主性と世代を超えた指導

 英語部の特徴は、役割分担と後輩指導の自主性である。部活の指導は顧問がやるのではない。ある生徒はスピーチに集中し、ある生徒は資料作りを担い、またある生徒は教育係として中学1年生にレクチャーを行う。自分たちのスピーチをよくすることに生徒間で高めあう。基本的には顧問ではなく、上級生が下級生と協力しながら、部活全体のスケジュールも生徒が立てているという。
 顧問によれば、教員としてはディベートのフレームワークを示すにとどまるという。部活動の具体的な役割分担は、あくまで生徒たち自身の手で決められているのだ。そうした自主性の中から、自然と「次の世代を育てよう」という意識が生まれているのが印象的だ。

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英語部の教室

学びの場としてのディベート

 英語部の活動は単なる語学学習にとどまらない。調査、論理構築、発表、そして即興のやり取り―そのすべてが教育装置として機能している。賛否双方を準備することで多面的な視点を持ち、反論を乗り越えることで思考を鍛える。
 英語部の活動を通じて身につけるのは、英語力だけではない。議論の場で必要とされる柔軟な発想と戦略的思考力である。そこに、未来のリーダーを育む土壌が確かに存在している。


栄光学園中学高等学校
神奈川県鎌倉市にある1947年創立の私立男子校で、カトリック修道会イエズス会を母体とする完全中高一貫教育のミッションスクール。「Men for others, with others」(他者のために、他者とともに)を教育精神に、学力だけでなく、他者と協働し社会に奉仕する精神を育むことを重視している。毎年およそ3人に1人が東京大学に進学する国内屈指の進学校として知られる一方、東京ドーム2.4個分に及ぶ緑豊かなキャンパスや、卒業生の隈研吾が監修した校舎などがある。卒業生に養老孟司、隈研吾、古川聡など、各分野を代表する著名人が名を連ねる。

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