2025.10.24 NEW BERETimes 大人も驚く!? 栄光学園の“好き”を探求する放課後探訪記 〜物理研究部編〜 第3回:栄光学園 物理研究部編 目次自由な発想で科学を探究―130人の大所帯が生み出す力活動内容―研究発表と栄光祭の舞台部活動の教室―世界を目指すロボットたちFLL班――レゴから世界へ多彩な挑戦と遊び心上下関係を超えた学び物理研究部の魅力とは 自由な発想で科学を探究―130人の大所帯が生み出す力 栄光学園最大の文化部、物理研究部。その部員数はおよそ130名。生物以外の理系分野をほぼ網羅し、PC班、工学班、航空力学班、地学班、FLL班、環境化学班、数学班といった班に分かれて活動している。 教室をのぞけば、ロボットを組み立てる手、プログラムのコードを打ち込む指、数式が書かれている黒板。それぞれが自分の「好き」を武器に探究を続ける様子は、研究室というより“実験工房”と呼ぶにふさわしい熱気にあふれていた。 物理研究部の様子 活動内容―研究発表と栄光祭の舞台 物理研究部では年2回の研究発表会を行い、合宿での発表も恒例行事になっている。文化祭「栄光祭」ではプラネタリウムの上映や数学クイズ、研究成果の展示など、来場者を楽しませる企画が目白押しだ。 「人数が多い分準備は大変ですが、全員で作り上げるからこそ大きな達成感があります」とキャプテンはそう語る。大所帯だからこその力が、栄光祭の成功を支えている。 物理研究部の教室 部活動の教室―世界を目指すロボットたち 工学班の教室をのぞくと、国際ロボット競技大会「FIRST GLOBAL Challenge(FGC)」に向けた準備で熱気に包まれていた。50センチ四方という制約の中で設計されたロボットが、ボールをタワーに入れるなどの競技に挑む。 国際ロボット競技大会に向けてロボットを製作する生徒たち 「選ばれれば海外の舞台に立てるんです」と楽しそうに語る生徒たち。他国のチームのアイデアを参考に改良を重ねる姿勢は、まさに未来の研究者そのもの。研究と挑戦が同居する現場に立ち会うと、その迫力に思わず引き込まれる。▶︎ FGC解説動画はこちら FLL班――レゴから世界へ レゴを使ったロボット競技「FIRST LEGO League(FLL)」に挑むのは、主に中学生が中心のFLL班だ。プログラムを組み込み、自律的に動くロボットが複雑なミッションをこなす。 今年の8月にはマカオで開かれた世界大会に出場し、「ブレークスルー賞」に輝き、高い評価を受けた。 FLL班の活動の様子 遠征の際には、ロボットのアタッチメントやパーツを丁寧に梱包し、壊れる前に写真で記録を残すなど、細部まで徹底する。真剣さと同時に、科学に夢中になれる少年らしい情熱がここにはある。■FIRST LEGO League(FLL)解説動画はこちら 多彩な挑戦と遊び心 物理研究部の面白さは、国際大会に挑むだけではない。教室では自作の「野球盤」で遊ぶ姿も。割りばしや爪楊枝で作られ、得点板まで備えた完成度。研究に直接つながらなくてもいい、自由な発想を形にする―そんな精神が部全体に浸透している。 また、科学の甲子園をはじめとする外部大会にも積極的に出場し、他校と合同チームを組むことも。競技を通じて校外の仲間と切磋琢磨する姿は、科学を媒介にした青春そのものだ。 自作の野球盤で遊ぶ生徒たち 上下関係を超えた学び 物理研究部には、一般的な「先輩・後輩」という厳しい縦の関係が存在しない。研究は個人や班単位で進み、必要に応じて学年を超えた協力が自然に生まれる。役割やスケジュールも生徒自身が決定するため、中学生が高校生と肩を並べる光景も珍しくない。上下関係に縛られないからこそ、自由な発想が妨げられず、研究が円滑に進むのである。 航空力学班によるロケット打ち上げ 物理研究部の魅力とは 「人数が多いからこそ、それだけ活動に多様性があり、伸び伸び活動できる。それが物理部の良さです」―キャプテンの言葉どおり、この部には学年や専門を超えた自由な探究の空気が漂っている。 研究、挑戦、そして遊び心。130人の研究者たちがつくり出す空間には、未来の科学者の芽が確かに息づいていた。 栄光学園中学高等学校神奈川県鎌倉市にある1947年創立の私立男子校で、カトリック修道会イエズス会を母体とする完全中高一貫教育のミッションスクール。「Men for others, with others」(他者のために、他者とともに)を教育精神に、学力だけでなく、他者と協働し社会に奉仕する精神を育むことを重視している。毎年およそ3人に1人が東京大学に進学する国内屈指の進学校として知られる一方、東京ドーム2.4個分に及ぶ緑豊かなキャンパスや、卒業生の隈研吾が監修した校舎などがある。卒業生に養老孟司、隈研吾、古川聡など、各分野を代表する著名人が名を連ねる。