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大人も驚く!? 栄光学園の“好き”を探求する放課後探訪記 〜鉄道研究会編〜

第4回:栄光学園 鉄道研究会編

(前回までの記事はこちら)
第1回:英語部編
第2回:生物研究部編
第3回:物理研究部編

50人の“鉄道好き”がつくる教室

 鉄道研究会は、部活動ではなく、グループ活動という位置付けである。栄光学園では、中学1年生全員が部活動に所属し、希望者は中学2年生になってからグループ活動に参加することができる。そこで今回は、部活動ではないものの、生徒たちの情熱を集め続ける「研究会」のひとつ―鉄道研究会の魅力に迫った。
 
教室に足を踏み入れると、まず耳に飛び込んできたのは電車のアナウンスメロディ。そして目の前には、精巧に組まれた鉄道模型のレールが走り、その横では生徒たちが鉄道ゲームに夢中になっている。白い手袋をはめて車掌さながらに操作する姿は、まさに“鉄道愛”そのものだ。

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鉄道研究会キャプテン

生徒が動かす、生徒のための研究会

 鉄道研究会の活動は、月曜日の研究報告や講義、そして栄光祭に向けた準備が中心。栄光祭では3教室をフルに使い、鉄道模型や研究成果を展示する。来場者で溢れる大盛況の舞台は、3か月前からの準備によって支えられている。
 一方で土曜日の活動はもっとラフだとのこと。鉄道をモチーフにしたカードゲームやシミュレーションゲームで遊びながら知識を深める。「UNO×東京メトロ」のようなカードゲームもあり、楽しみながら自然と路線を覚えていく。生徒は「運転のシミュレーションゲームも勉強の合間の気晴らしになるんです」と笑顔で語る。もっとも、「たまに上野~宇都宮みたいに、気晴らしではすまない長い線を走ることもありますけどね(笑)」と続けるあたりも実に楽しげだ。遊びと学びが自然に重なり合う—それこそが鉄道研究会ならではの大きな魅力だろう。

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鉄道研究会の活動の様子

合宿は“本物の鉄道”で

 毎年の夏合宿は鉄道研究会の大きなイベント。今年は富山に足を運び、地方鉄道を貸し切って車両見学を実施。生徒たちは交渉から段取りまで自ら進め、時には栄光学園のシンボルマークを掲げた看板を車両の先頭につけ、特別列車として運行することもある。合宿ごとに貸切運行を行うのが恒例で、費用はおよそ10万円かかるが、合宿に参加する会員から集金して一人当たり2000円程度に抑える工夫をしている。顧問教員は切符の手配にとどまり、活動自体に口を出すことはあまりないとのこと。自由な空気の中で、生徒一人ひとりが自分の「好き」を持ち寄り、思い思いに鉄道と向き合うのがこの合宿の醍醐味だろう。

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鉄道研究会の教室

会誌は“原価率98%”の力作

 栄光祭で毎年販売される鉄道研究会の会誌は、写真や研究記事が詰まった力作だ。例年、完売するほどの人気を誇るが、利益を目的とせず「より良いものをつくる」ことを追求しているのが特徴的だ。制作費は原価率98%という徹底ぶりで、発注からデザイン、紙質の選定に至るまで、すべてを生徒自身が担っているというから驚かされる。

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鉄道研究会の会誌『Single Arm』

OBとの強いつながり

 鉄道研究会には上下関係に縛られない自由な空気が流れている。先輩後輩が一緒に新幹線で旅行に行ったり、OBの就職祝いをみんなで祝ったりと、学年を超えた交流が当たり前のようにある。卒業後もOBが顔を出し、後輩たちを見守る。 

 「同じ趣味を6年間共有してきた仲間だからこそ、自然と絆が深まるんで
  す」

とメンバーは語る。鉄道研究会の活動は鉄道だけにとどまらない。飛行機やバスなど交通全般を扱ったり、ディズニーランドから学園までどう行くかといった独自研究も進めている生徒もいる。キャンプや旅行も鉄道と結びつき、日の出を見るために常磐線に乗ることも考えているそうだ。

 「最初にこの線に乗りたい!から旅の計画が始まるんです!」

鉄道を中心に広がる世界は、遊びと研究の境界を軽やかに超えていく。

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鉄道研究会のTシャツ

未来に向けて

 現在50人の仲間が集う鉄道研究会は、キャプテンによれば、いずれ正式な“部”に昇格することを目指しているという。部費の規模が変われば、合宿や活動の幅もさらに広がるからだそうだ。

 「大学に進んでもなにかしらの形で鉄道研究を続けたいですね。でも宇宙 
  工学にも興味があるので、大学進学はそっちの道に進みたいです」

 キャプテンはそう語る。鉄道から宇宙へ。進路も夢もさまざまだが、共通するのは“乗り物を愛する心”だ。

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栄光学園校長が語る課外活動の力

 栄光学園の校長は、課外活動の存在をこう語る。

 「文化系の活動は一人ひとりが自由に取り組めるのが醍醐味です。研究に
  没頭する生徒が核となり、その姿が周囲を刺激して輪が広がってい
  く。“好き”を起点に、授業では得られない学びを手にできるのです」。

 自身も在学中はソフトテニス部に所属し、後輩を指導する経験から教職を志すようになったという。また、長崎・平戸を訪れた際の体験を「世界が変わった瞬間だった」と振り返り、今の生徒たちも同じように人生を揺さぶる体験を重ねているのかもしれないと語る。「自分も在学時は、今の栄光生のようにもっと積極的に行動すればよかった」と語る校長の言葉からは、栄光学園の課外活動が放つ独自の魅力が浮かび上がる。

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栄光学園校長 柳下修先生

栄光学園中学高等学校
神奈川県鎌倉市にある1947年創立の私立男子校で、カトリック修道会イエズス会を母体とする完全中高一貫教育のミッションスクール。「Men for others, with others」(他者のために、他者とともに)を教育精神に、学力だけでなく、他者と協働し社会に奉仕する精神を育むことを重視している。毎年およそ3人に1人が東京大学に進学する国内屈指の進学校として知られる一方、東京ドーム2.4個分に及ぶ緑豊かなキャンパスや、卒業生の隈研吾が監修した校舎などがある。卒業生に養老孟司、隈研吾、古川聡など、各分野を代表する著名人が名を連ねる。

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