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  • 著者のコラム

「社会人」に一休み、中国留学してみれば 第1集

著者 林屋啓子

外国語の勉強が大の苦手だった私ですが、職場で中国人の女の子と仲良くなったのがきっかけで、中国語をかじってみることにしました。市民講座に申し込むと、中国語は漢字のおかげで手がかりが多く、スタートダッシュをかけられることが分かりました。すっかり気を良くした私は、2年ほど勉強したあたりで、大胆にも中国に留学しようと思い立ちました。当時、正社員でなかったこともあり、ちょっと生活を変えてみるのもいいかなという気になったのです。その頃のレベルは中検3~4級ぐらいでしょうか。

北京語学大学
大学校舎(北京語言大学)

留学生活、スタート!

北京へ渡り入学手続きを済ませると、ものすごくレトロな花柄の洗面器と魔法瓶を渡され、学生寮に振り分けられます。外国人向けの寮は基本的に2人1室で、私は韓国人と”同屋(ルームメイト)”になりました。彼女は年下ですが、4年生でずっと北京に住んでいるので中国語も自由自在、完全初心者の私にとっては頼れる存在です。しかも意思疎通の手段は中国語なので、まさに願ってもない環境です。

著者、林屋啓子と韓国人ルームメイト
著者(左)と韓国人ルームメイト

大学ではクラス分けのテストがありました。ただ、日本人は漢字のアドバンテージがあるので、実力よりも高い点数が出やすいのです。案の定、私は編入では一番レベルの高い「2年後期」に決まりました。テストが終わると「シュエンカーをしろ」と言われます。指定された窓口で「シュエンカーとは何ですか?」と聞いてみると、「はあ?”选课”も知らないくせに2年後期だなんてあきれた!」と怒られ、ようやく科目選択のことだと分かる始末、一事が万事この調子です。

実際、授業に出てみると……

2年後期ということは、他の生徒はこれまでも北京で暮らし、授業を受けてきた人たちです。初めての授業は作文で、女性の先生がすごい勢いで授業を進めていきます。何を話されているかさっぱりで、唯一聞き取れるのは先生が一通り話した後に付け加える”明白了吗?(分かりましたか?)”のみ。当の先生も、まさかここまで分かっていない生徒が混じっているとは想像もされていないことでしょう。時々黒板に書かれるのは”描写””表现”といった単語。もしも字幕があれば、何とかなるかもしれないのに!

連日の授業はまさに薄氷を踏むようで、「どうか指名されませんように…」と願うほかありません。本来なら後ろに座りたいところですが、実は留学前、中国人の友達に「必ず前から3目までに座ること!」と謎の約束をさせられたのです。仕方なく3列目でも大柄な人の後ろに座るなど無駄な努力をしていましたが、徐々に前列に座る意味が分かってきました。日本人の先生は公平に指名する場合が多いのですが、中国では「発音ならこの生徒」「読解なら彼女が的確」というように、ベストな答えを出す生徒を指名し、「質の高い授業」を目指す先生が多いのです。つまり「目立つメンバー」に入らなければ、聞いているだけになってしまいます。

せっかく授業料を払ったのですから、傍観者ではもったいなさすぎます。私は予習に時間をかけ、テキストの発音をすべて書き込むことにしました。字幕で何とかなるのなら、読み方さえ分かれば少しはましでしょう。その考えが功を奏し、1か月もすると授業についていけるようになりました。こうなると戦法も立てられます。私は他の多くの生徒と違って社会人経験があるので、「別の見方ができる人?」などの質問が割と得意なのです。たどたどしくても発言し先生に覚えてもらうことで、傍観者から昇格できるのです。こうして場数を踏むことで、授業も徐々に楽しくなっていきます。

到着したばかりの寮の部屋
寮の部屋(到着したばかり)

「産むが安し」は正しいのかも

この頃には寮生活にも慣れてきます。私の寮にキッチンはありませんが、学生食堂は格安ですし、「炊飯器もどき」を買ったので自炊もできます。留学生は韓国人が圧倒的に多いのですが、東南アジアの華僑や華人、アフリカ系や欧米系と人種も様々、学生の気安さで誰とでもすぐ友達になれます。留学生活、それなりに幸先が良さそうです。

炊飯器もどきで作った料理
友人の誕生日パーティ
韓国人、モンゴル人、日本人

記事を書いた人:林屋啓子(はやしや けいこ)

社会人になってから中国語に興味を持ち、仕事を辞めて中国で2年半の留学生活を送る。北京語言大学卒業後は中国語学習雑誌『中国語ジャーナル』(アルク)の編集を8年にわたって担当。また、中国語学習書・教材の企画、制作、編集、校正などを数多く手掛ける。著書に『「社会人」に一休み、中国留学してみれば』(文葉社)、共編著に『選抜!中国語単語 常用フレーズ編』(相原茂 朝日出版社)がある。

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