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夏目漱石『こころ』発表から100年

「精神的に向上心のないものは、馬鹿だ」――夏目漱石の『こころ』が世に出て100年になるそうです。冒頭はこの小説のなかで「先生」が「K」に言い放った台詞ですが、いまだに僕を縛りつけて止みません。『こころ』はもともと1914年4月から朝日新聞の連載小説(全110回)として発表されたものです。それを読んで感動した岩波茂雄が頼み込んで、当時古本屋だった岩波書店から自費出版の形で発売されました。漱石も自ら装幀を手掛け、次のような広告のキャッチコピーまで書いています。「自己の心を捕へんと欲する人々に、人間の心を捕へ得たる此作物を奨む」。(参考までに新潮文庫の中での累計発行部数は670万部超で1位!2011年8月)

『こころ』は、教科書でほとんどの方が目にしたことがあると思いますが、自分にとっては、おそらく「おとなの世界」を垣間見たはじめての読書体験であり、人生においていろんな意味で“こころ”に残り続ける作品です…。当時、まさに「自分の心を捕へんと欲」していた、若き自分を突き刺す必殺フレーズが満載で、悶絶しながら読み抜いた記憶があります。「…然し君、恋は罪悪ですよ。解っていますか」――ガビーン! 年を経て、このたび読み返してみましたが、まだまだ含蓄に富んだ内容で、あまりに自分が成長していないのを思い知らされました。この本は一生付き合えるエゴイズムについての教科書かもしれません。

「おれは策略で勝っても人間としては負けたのだ」――あのとき僕は策略で負けて、人間としても負けていたような……しょっぱい思い出が甦ってきました。

モリ

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