2026.03.23 NEW 社長コラム いいお店ですね!の話 日本のみならず、世界でも屈指の本の街として知られる神保町。その 東京都千代田区神田神保町一丁目一番地 に、三省堂書店さんの本店があります。2022年にビルの建て替えのため一度閉店し、仮店舗での営業を続けていましたが、2026年3月19日、 三省堂書店神田神保町本店 としてリニューアルオープンしました。出版関係者向けの内覧会に参加させていただいたのですが、以前の本店とは様変わりした、斬新で遊び心のあるレイアウトが印象的で、とても居心地のいい空間だと感じました。 さて、三省堂書店さんに限らず、新しくオープンする書店さんがあると、出版社の人はこぞって“視察”に訪れます。私もそうですが、出版社の人は基本的に書店さんが大好きなので、新しいお店に訪問するのは純粋に楽しい時間です。書店の開店日には必ず出没する、常連の出版社が何人もいたりもします。 そして、開店の日に出版社同士で話すときには「ここがいいね」「ここはもう少しこうだといいね」などと、愛情溢れる(余計なお世話?)評価を言い合ったりします。そうしたときに、必ずと言っていいほど出てくるのが品揃えの良し悪しについての論評です。 この場合の「品揃えがいい」とは、「置くべき基本書がきちんと置かれている」という意味で使われることが多く、かなり玄人目線の話になります。自社の売れ筋商品が並んでいるかどうかは、売上に直結する問題でもあります。ただ、そうした実利的な事情を抜きにしても、出版営業マンには「いい棚」「ふさわしい品揃え」を求める、ある種の職業的欲求があるように思います。私自身も品揃えをチェックするのが好きで、ポイントを押さえた品揃えの棚を見ると嬉しくなります。 ただ、自戒を込めて言うと、出版社の人間が「いいお店かどうか」を語る際に、「品揃えのよさ」という評価軸に引っ張られすぎてしまう傾向があると感じることがあります。品揃えがいいことは、いいお店であるための、確かに重要な条件です。しかし、それはあくまでも「いくつかある条件の一つ」にすぎません。そもそも、「いいお店」とは「誰にとっての」いいお店なんですか?という視点が抜け落ちがちです。商売として見れば、「たくさん売れて、利益が出ているお店」がいいお店だと言えるでしょう。一方で、口コミの星の数で評価するのであれば、売上や利益は関係ありません。もっとシンプルに考えると、「たくさんのお客様に愛されているお店」がいいお店だと定義してもいいように思います。 お客様が「いいお店だ」と感じる理由は、「ほしい本が置いてある」ことだけではありません。「居心地がいい」「店員さんが親切」「なんだかワクワクする」など、いくつもの要素が重なり合って、その評価が生まれます。品揃えの話は、どうしても業界内の内輪の評価になりがちです。一方で、書店さんの現場には、もっと純粋にお客様目線で「いいお店」になるための工夫や努力があふれています。 出版社の人間として、つい棚ばかり見てしまいがちですが、これからはもう少し広い視点で書店さんを見るようにしたいと思います。先ほどの三省堂書店神田神保町本店さんは、品揃えがいいのはもちろんのこと、それ以外の点でも、「いいお店ですね~」と言いたくなる要素がたくさんあると感じました。こうした、思わず足を運びたくなる「いいお店」が、これからも増えていくことを願ってやみません。