2026.07.27 NEW 社長コラム 近くに書店がある幸せ 以前も書きましたが、年始に父で創業者の内田眞吾が亡くなりまして、先月、その「お別れの会」を開催しました。会社としても、これで一つ区切りがついた感覚です。社員一同、心機一転して新たなステージに進んでいこう!と思います。 と言いながら、今回は以前父が開業した書店の話をします。 全国で、書店が減少していることがしばしばニュースになります。近隣地域に書店が一つもない「無書店自治体」も増えています。父は書店減少を大変憂いており、ベレ出版の経営を私に任せた後、「無書店地域でも持続可能な書店のモデルを作り、広めること」を目指し、2017年に、栃木県那須町に「那須ブックセンター」を開業しました。 父が考えたのは、自治体や地域住民の支援も借りて安定した経営が継続できる書店を作るというビジネスモデルでした。志に共感して、格安で土地を貸してくださる地主さんに出会えたことも那須町に開業する決め手の一つでした。しかし、詳細は省きますが、結果的に那須ブックセンターの経営は軌道に乗らず、2021年、志半ばで閉店することになります。 その後も書店の減少は続いており、無書店自治体もさらに増えています。そんな中、今年の6月、二つの無書店自治体に書店の新規開店がありました。一つは島根県大田市にオープンした、今井書店大田店。もう一つは、茨城県常陸太田市にオープンしたTSUTAYA BOOKSTORE常陸太田店です。偶然ですが、ちょっと似た名前の自治体です。島根の方は「おおだ」、茨城の方は「ひたちおおた」と読みます。 島根県の事例は、2024年に無書店自治体になってしまった大田市が助成制度を作って、書店を公募しました。それに山陰の老舗書店である今井書店が手を挙げた形です。茨城県の事例は、常陸太田市が住民にアンケートを取ったところ、書店を望む声が最も多かったことがきっかけで、茨城県を中心に展開するブックエースさんに声がかかりました。新設される官民連携複合施設の中に作られた書店で、こちらも市から手厚い支援を受けています。どちらも、地域住民から大きな期待を集めており、開店日にはたくさんのお客さんが訪れたそうです。 TSUTAYA常陸太田店さんには、オープンした数日後に訪問して、お店を見せていただきました。次々とお客さんが来店し、楽しそうに過ごす姿を見て、書店がどれほど望まれている存在なのかを直に感じることができました。今井書店大田店さんにもいずれ行ってみたいと思います。 父の「お別れの会」を開いた当月に、まるで父の遺志を継いだような地域に根差した書店が二つもオープンしたことに、なんだか不思議な縁を感じずにはいられませんでした。書店の減少は、出版業界にとっても市場縮小という面で問題ですが、文化や知的活動の拠点となり得る書店が近隣にないことは地域にとっての大きな損失だと考えています。ベレ出版は出版社なので、自ら書店を運営するつもりはありません。そんなに簡単なものではない、ということも、那須の例を見て理解しています。ただ、出版社は本を作るだけでなく、それを読者の手に届けることまでが本来的な使命であるというのがベレ出版の会社方針です。書店や、それを望む市民のために、何かできることがないか、ということを今後も常に考えて、実行していきます。一区切りのタイミングですが、そのことを改めて強く感じる出来事でした。ビバ書店!!