2026.09.25 NEW 編集部コラム リンガラ語の浅瀬にて 「リンガラ語」を学びはじめて、5年ほどになります。きっかけは、アフリカの言葉に興味を持つ面白い先輩たちのグループに入れてもらったことでした。レベルは常に「超低空飛行」。上達する気配はまったくありません。毎回、習ったことをすべて忘れて現れる私たちを前に、先生であるコンゴ民主共和国出身の友人は「なんで⁈」という顔で頭を抱え、「Moto pasi(頭痛い)」と言います。勉強しようと意気込んだ日もありました。仲間が英・仏の辞書を買って「ジャーン」と見せれば、私も負けじと「研究」という名目で手に入れたテキストを見せびらかします。そこから三度の飯も忘れて勉強に励んだ――なんてことは、もちろん起こりません。私たちは今も足首を越えないほどの浅瀬にいて、「Sango nini(ご機嫌いかが)?」から始めています。リンガラ語は、コンゴ民主共和国やコンゴ共和国などで使われている言葉です。交易などのために発達した地域公用語で1000万人以上の話者がいるといわれます。大雑把に言えば、ローマ字のように書けば伝わり、発音も日本人に比較的なじみやすいと感じます。日本語と違っていておもしろいのは、「ン」から始まる単語が多いこと。初めて知った時は「しりとりで最強になれる!」と感動しました。話し言葉として広がったためか、時々表記揺れを目撃します。英仏二つの辞書で「猫」の綴りが違ったときはズッコケました。でも、「どちらが正しいか」悩むより、「どっちもあるのかも」と思える。そんな懐の広さと奥深さを感じる言葉です。いいところは他にもあります。何より在日コンゴ人にめちゃくちゃウケる!仲間の一人は「コンゴ人に褒められたい」という一心でリンガラ語の歌まで覚えていました。気持ちはよくわかります。私もリンガラ語の歌が流れようものなら「今nzoto(体)って言ったよね?」「mbwa(犬)って聞こえなかった?」と、雀の涙より少ない知識を披露するウザい学習者に変身します。そんなふうに、足先だけ水につけたまま時間だけが過ぎました。でも水に触れ続けていると、ときどき思いもよらないことがコンゴ川のほうからやってきます。歴史や文化、人の背景……知らないことばかりで毎回驚愕しています。蚊はngungi、家はndako、サッカーはndembo…。今の私は、しりとりで負ける気がしません。 ワキヤマ(タ)